脳膿瘍を叩く その2

ずっと以前に、脳膿瘍を経験したのですが、その時点でCLDMが血液脳関門を通過出来ないことを知らなかった私は、起炎菌に対するCLDMの有効性について、何の疑問もなく普通に主治医と話をしていました(起炎菌は、嫌気性菌を含む、口腔内常在菌だと考えられました)。いま思うと、患部に届かない薬が効くわきゃありません。次に同じ症例を見たら、CLDMはやめてもらうようにします。反省。

嫌気性菌=CLDMの図式は日本のDrにとっては非常に「教科書的」で、わかりやすいもののようです。あと、嫌気性菌に対してPIPCってのも習うみたいですね。これは半分間違いです。横隔膜上嫌気性菌には有効ですが、横隔膜下嫌気性菌に対しては無効だと思ってください。PIPC/TAZだったら、たぶん有効です。

というわけで、改めて脳膿瘍に使える薬剤を検討してみると、愕然とするくらい使える薬剤がないんですよね……Bacteroidesが絡んでいないときはPCGでほぼOKかなと思いますが、結果論的にBacteroidesが出てきた今回のケースだと、CTXでしょうか。た、単剤だと不安だ……やはりMZをかまさないことには……

こう考えると、静注用のMZがないのは不便ですね。まあ経口でも十分吸収される薬剤ですが……

さらに考えると、MSSAの髄膜炎や脳膿瘍に対して、効果的な薬剤がないことにも愕然とさせられます。CEZは使えないから……CTRXになるのかあ?ナフシリンをください……