クラバモックス

小児の中耳炎なんですが、きょうはじめてクラバモックスという抗菌薬を見ました。最初、伝票の字が汚かったのでフロモックスの間違いかなと思ったんですが、そもそも字数が違いますしね(笑)。調べてみたら、ちゃんとクラバモックスという薬があったので納得しました。近医で処方されたようです。

ネットで軽く調べたかぎりでは、AMPCにCVAを配合した、従来のAMPC/CVAと似たようなモノみたいですね。オーグメンチンはAMPC:CVA=2:1で配合されているのに対し、クラバモックスはAMPC:CVA=14:1だそうです。つまり、より多くのAMPCが入っているわけですね。AMPCの含有量を増やすことで抗菌力を上げて、PRSPなどの耐性菌に対抗しようと云う趣旨のようです。


さて、恒例の考えてみようシリーズになります。
そもそも中耳炎の起炎菌は何か、といいますと、S.pneumoniae、H.influenzae、B.catarrhalisですね。中耳炎の三大起炎菌です。コレに続いて、S.aureusやS.epidermidisが挙げられるかもしれません(これらは外耳道の常在菌でもありますので、起炎菌としては限りなくグレーゾーンです)。さて、もうすでに感染症を叩くカテゴリで中耳炎についての私の考え方は述べさせて頂いていますが、私は中耳炎の第一選択薬にはAMPC/CVAがいいんじゃないかと思っていました。じつはあとから調べてわかったのですが、この三大起炎菌のなかでも多いのはS.pneumoniaeとH.influenzaeであり、このふたつで8割を占めるようです。個人的には、耳漏から出てくる菌としてはS.pneumoniaeが圧倒的に多いと思います。ですので、急性中耳炎の場合は、AMPCで十分だということになりますね。PRSPやBLNARが出てきたときにはちょっとツライですが、ほとんどの場合をカバー出来ると思います。つまり、このクラバモックスは、AMPCの大量投与で代用可能だということですね。もちろんAMPCではカバー出来ないB.catarrhalisをカバーしますので、こちらの方がより広域です。難治性の中耳炎にのみ適用でしょう。

この製剤のいいところは、ただでさえコンプライアンスの悪い小児に対して、薬の投与回数を少なく出来る、ということでしょう。あまり深く検討していないのでじっさいどうなのかはわかりませんが、オーグメンチンが6〜8時間ごとに投与なのに対して、クラバモックスは12時間ごとに投与です。薬を飲みたがらない小児の感染症治療において、薬の飲みやすさ、飲む回数はとても重要ですね。飲まない薬は効きません。当たり前のことですが……

というわけで、大して何も考えていませんが、クラバモックスの使い道は、小児の難治性中耳炎に限られる、という結論でした。そして実際にクラバモックスの適用は小児の中耳炎にしかありません。院内にない場合はAMPCの大量投与で代用可能だと思います。セフゾン、フロモックス、メイアクトをふらふら考えなしに投与するよりも、いちどは試してみるべき選択肢ではないかと思います。

伝染性単核球症患者には禁忌です。アミノペニシリンですからね。