ときどき、「感受性結果を参考に適切な抗菌薬を選んでいるのに、ぜんぜん患者がよくならない!」という、悲鳴のような声を聞きます。いちばん多いのがだらだらとCRPが高く、陰性にならないというパターン。次に急性期で、ちっとも軽快しないというパターン。(この結果、間違ってんじゃないの?という訴えが聞こえてきそうで、この手の訴えは落ち着きません)
臨床的に抗生剤が効かないという状態には、いろいろ原因が考えられると思います。
- そもそもスペクトラムを外している
- マイコプラズマ肺炎にセフェムとか。培養結果を待てずに起炎菌不明で始めた治療に多い。
- たまたま耐性菌だった
- とはいえ、耐性菌はほとんど定着しているだけで、発病していると思われる例は意外に少ない。たとえば尿。
- 血管内感染症や局在化した病変の存在
- CVカテーテルの感染症はまさにこれ。膿瘍や壊死も同じ。IEも。
感受性結果を見ながら抗生剤を選んでいるのにCRPがだらだら高い、どうして?というパターンは、1と2の複合型かな、と思います。つまり、そこにいただけの無実の耐性菌を培養で拾っちゃった、というだけで、じつは感染の主体は別のところにありますパターンですね。
β-Dグルカンが高値で抗真菌剤を投与し始めてもぜんぜん効かない、というパターンは、たいてい3です。カテーテルに取り付いたCandidaはむちゃくちゃやっかいで、ほとんどの場合は抜去なしに治癒することは難しい。おおむね、ウチの主治医はFLCZ→MCFG→VRCZという使い方をするので、効かない=耐性菌?と考えていることがわかるのですが、ほとんどのカテ感染はFLCZでOKです。困るのはC.glabrataが出てきたとき。そのときはおとなしくMCFGかなあと思うのですが、薬剤を変更する前に局在化した病変の検索をやった方がいいだろうと思いつつあります。通常、VRCZを使わなければならないと感じることは稀です。
ことCandidaに関しては、耐性で治療に失敗した、というより、局在化した病変を見逃して治療出来なかった、という方が多いんじゃないかなと思う今日この頃です。