免疫不全宿主の感染症2

次に問題になるのが、臓器拒絶反応や炎症反応を抑えるための免疫抑制薬による免疫不全宿主、つまりT細胞機能が抑制された患者です。このグループに属する患者の大半がステロイド服用者ということになります。現在では臓器移植患者の重要性が増してきており、施設によってはこちらの方がずっと重要だったりします。考え方はほとんど同じではないかと思いますが……

  1. 細胞性免疫機能不全宿主
    • ステロイドの使用は感染症に罹患する可能性を上げる。
    • 抗酸菌感染症、リステリア、ノカルジア、まれではあるが播種性のサルモネラの感染確率が上がる。これらの菌に共通する特徴は、「細胞内寄生性」であるということ。これ以外の菌にも感染するが、それはTcell↓が原因というわけではない。
    • さらにこのグループは、上記の菌に加えて多くの真菌に感染する。酵母、糸状菌の両方に感染するが、Asperguills、Fusarium、Mucorなども重要で、これらの感染症はときに致死的である。
    • C.neoformansも忘れずに。髄膜炎は適切に治療しなければ死に至る感染症。
      • 墨汁染色が有用。もっとも、私自身はやったことがない。
    • しかし、もっともよくみられるCandida感染症は、意外なくらいTcell↓宿主に感染症を起こさない(つまり特異的に発生させるわけではない)。これはCandidaによる感染が、好中球によってコントロールされていることを示唆している。(つまり、こちらの感染症は、<500で問題になる)


これだけ?って感じですが、好中球減少を伴わない免疫不全宿主の発熱時に原因となりうる微生物を考えてみると、そのあまりの多さにめまいがします。ウィルスも含めれば、その範囲は広大です。それゆえに、この群の発熱はしっかりと原因を精査されるべきで、通常、この群の発熱はエンピリック治療に馴染まないとされています。

ただし、中枢神経系の感染症は十分に致死的になり得るので、頭痛や中枢神経症状は緊急対処されるべき症状になります。この群で中枢神経系の感染を起こす細菌は、C.neoformans、リステリアです。肺病変から引き続いてノカルジアも転移したりしますが、いずれにせよやっかいな感染になります。