免疫不全宿主の感染症1

医療の高度化に伴い、免疫不全宿主を診る機会は増えたと思います。臓器移植や骨髄抑制、ステロイド、脾摘、AIDS……さまざまなシーンで免疫不全宿主を診ること多くなりました。加齢ですら、一種の免疫不全と捉えられるかもしれません。これらの免疫不全宿主に起こる感染症は非常にややこしく、いつも主治医が頭を悩ませている分野です。

一口に免疫不全と云うとややこしいだけで、大きく二種類にわけて考えます。好中球減少の結果起きる免疫不全、T細胞機能不全による細胞性免疫不全です。それぞれ考えるべき微生物の種類が違います。

  1. 好中球減少患者
    • これは骨髄抑制や化学療法などで発生するパターンで、好中球の減少(<500)によって定義される。
    • 基本的に、数が減れば減るほど、減少の期間が長ければ長いほど、感染症が発生する確率が上がる。
    • この状態における発熱は内科的な緊急事態で、速やかに診断をつけて、エンピリックに抗菌薬を投与し、治療しなければならない。
    • ことにグラム陰性桿菌の敗血症は致死的な感染症になり得る。とくにP.aeruginosaによる感染症は恐れられており、FN時の発熱はP.aeruginosaをカバーすることが前提。
    • 感染フォーカスは不明であることも。腸管内の常在菌ですら、敗血症の起炎菌になり得る。この場合は、容易に複数菌感染症を起こし得る。(個人的には、腸管内に定着したP.aeruginosaが嫌い)
    • ところが、意外に嫌気性菌は感染を起こしにくい。
    • 真菌、とくにCandidaは発熱の原因となり得るが、あまりFN時初期の感染症にはならない。どちらかというとFNが長引いた結果出てくる。これはしばしば他の感染症を治療中に発生する。

どちらかというと、こちらの方が原因と結果が一致しやすくて考えやすい気がします。どちらも目に見える形で症状が前面に出ますし(白血球<500、発熱)、対処の方法も抗菌薬の投与なので抵抗が少ないです。検査的にもわかりやすい菌が出てくるので、あまり悩みもなく進めることが出来ます。