市中MRSA感染症

さいきん入院歴のない患者からもMRSAが検出されるようになってきています。当院では1年間で統計を取ってみると、皮膚膿汁と創部から検出された患者の割合は、3割になりました。全国平均が2割程度だと読んだことがあるので、まあ高い方になるのかなと思っています。

黄色ブドウ球菌が絡むことが多い感染症の代表が、皮膚軟部組織感染症です。深度の浅いものから順に、膿痂疹、毛包炎、せつ、蜂窩織炎、壊死性筋膜炎になります(抜けてるぞ、という突っ込みは置いておいて)。夏場に多いのが伝染性膿痂疹とびひですね。夏場になると、皮膚膿汁や創部として検体が多く提出されてきます。こういった検体から、MRSAが出てくるわけです。治療にも難渋するのが普通で、なかなか治りません。とびひ程度の表層の感染症なら、抗菌薬を使わない方がよいのではないかと思うこともしばしばあります。いつの頃からかMRSAが目立つようになってきたのですが、このMRSAが、なかなか面白い感受性パターンをしてるわけです。

大抵の場合、CEZのMICはかなり低く表現されます。もちろんMRSAですので、臨床的には耐性です。ほかには、LVFX、感受性です。MINO、感受性です。EM、耐性です。CLDM、感受性です。アミノグリコシドの耐性パターンは数種類見られます。外来で採取された15歳以下のMRSAの、じつに75%にこのような傾向が見られました。とても面白く、興味深いです。

台湾で蔓延している市中型MRSAはEMとCLDMに耐性のものだそうです。この市中型MRSAはどうやら大陸特異性があり、地域毎に感受性パターンや遺伝子セットが違うようなのですね。日本で出回っているのはアジア型なんでしょう。本邦ではマクロライドが安易に処方されまくった経歴がありますので、それも現状に一役買っているかもしれません。S.pneumoniaeにマクロライドがほとんど効かないのは、間違いなくその影響です。

さて、こうやって統計を取るまで気がつかなかったのですが、ウチではDテスト、していませんでした。当院では経口のCLDMが存在しないので、外来でCLDMを使うことがない。だからいいかな、と思ってしていなかったんですが、さすがに気になってやってみることにしました。資材が手元になかったので、発注して、届くのが週末。結果は来週までお預けです。