異物は取り去れ

異物は取り去るべし。これは感染症を治療するときの大原則だと思います。さいきん立て続けにカテーテルに関連したCandida血症がありましたが、結果論として、カテーテルを入れたまま治療に成功したケースは一例もありませんでした(n=4ですが)。一週間以上血中からCandidaが出続けて、ようやく思い至ったのかカテーテルを出してくる、もしくはこちらがたまりかねて指摘して、はじめて出してくる、というケースが続きました。Candidaが血液から出てきたらまず間違いなく最初に考えることはカテーテルだと思うのですが、不思議な話です。(顆粒球減少がある場合は話が別です)

異物があると微生物がその異物に接着するため、擬似的に感染性心内膜炎状態になります(なると思います)。こうなるともはや手の打ちようがなく*1、抗菌薬では治療することが(非常に)難しくなります。Candida parapsilosisにVRCZを使い続けて一週間、どうしても血中からCandidaが消えなかった、なんて例もありました。ある程度は治療に反応するので、余計に始末に悪いんですよね(いちおうβ-Dグルカンが下がっていくようです)。最後まで綺麗にならないので、時間が経ってから首をひねることになります。で、いたずらに抗菌薬を重ねたりして、余計に泥沼になっていったりするわけです。

あるとき、たまりかねて(若い)主治医に、「Candidaが血培から出てきたら、ほとんどの場合はカテーテルですよ」と云ってみたところ、素直に納得してくれたようで、次からはカテーテルが頻繁に出てくるようになりました。かなりの割合でべったり汚染されており、血液培養の検出菌と一致します。非常に教科書的な話ですが、症例の大半は教科書通りに進行していくものです。それが「積み重ねられてきたもの」であり、学ぶべきことだと思います。*2

*1:FOMがバイオフィルムへの抗菌薬の透過性を高めるという説を拝見したことがありますが、スタンダードとは云いがたいような……もにょもにょ

*2:現実の症例は、教科書的な要因が複数重なって起きているため、非常に複雑ですが