Enterococcusのこと

抗生剤を使って感染症を叩いておられるみなさま、お疲れさまです。再度、申し上げます。
Enterococcusにセファロスポリンは効きません!*1

セフェム万歳で育ってきているDr相手にこんな話しをしても、なかなか信じてもらえないようです。耐性機序の話しとかするとそっぽ向かれるのがわかっているのでそんなことはまずしないんですが(面倒だし)、きょうばかりはこんこんと説明した方がいいのかしらん、と本気で思いました。あと、なんだ、菌別の感受性を載せたテーブルを出版している、いかにも人畜無害、パブリックな名前をした組織であるところの君!どういう意図で腸球菌にCTXが感受性ありなんて書いているんだね?おかげで云い負けるところだったじゃないか。

最終的には、私があまりに「Enterococciにセファロスポリンは自然耐性です!」を繰り返すので製薬会社に確認したらしく、Drも納得してくれました(別に喧嘩したわけではなく、セフェムが使えないと困る特殊な状況だったのです)。でも納得したからといって困ることに変わりはないので、どうしようかえらく悩んでいましたが……私も明確な根拠を持って推奨出来る薬剤がなく、なかなかに情けない状況でした。最終的にはLZDか、VCMくらいしか思いつかない……どういう状況か、わかってしまいますね。

まあしかし、「感受性試験してみないとわからない」などと云いだすとは思いませんでした。なんとまあ、非科学的なことを。勘弁してください、同じ○○○○にそんなこと云われたら、私はどうしたらいいんですか。いままでの蓄積されたデータから臨床的には無効だということがはっきりしています。Enterococciの治療にセフェムを使うのはきっぱりと諦めましょう。


もしかしたらアホほど高濃度にしたら効くかもしれませんが、少なくとも人体内で実現出来る濃度では耐性です。患者の身体で人体実験するような真似はしないにこしたことありません。重箱の隅をつつくような例外として、CZOPがE.faecalisに効いたりしますが、例外は例外です。E.faecalisを狙ってCZOPを投与した報告があったら、ぜひ教えてください(嫌みに聞こえかねませんが、こんかいのケースに対処するための一策として、マジで読みたいんです)。

あと前述の団体はCFPMがE.faecalisに効くよ、なんて書いてあるんですが、これも間違いです。より正確に云えば、MICを測定したら、およそ25(μg/ml)ほどだそうですね。このMICで人体内でTAM>40%を実現することはおそらく不可能なので、これもすっぱり諦めてください。おとなしくペニシリンを使いましょう。

*1:いくつか例外はあるけど