ロセフィン(CTRX)は強い薬か?

最近、緑膿菌のからまない感染症で初期投与薬が臨床的に無効の場合、CTRXを使用しはじめるケースが目立つようになってきました。最初のうちは何かCTRXが多いな、くらいにしか思っていなかったのですが、個人的にちょこちょこ調べるうちに、こじれた肺炎や再燃した症例に多く使われているような印象を受けました。使いやすいのでしょうか。

しつこいくらい繰り返しますが、日本のセフェムの投与量は少な過ぎ、また投与間隔が長過ぎます。成人に発生した蜂窩織炎の入院症例に0.5g朝夕二回のCEZ。腎臓でも悪いのかと思いきや、別にそんなこともなく、軽症なので「なんとなく」少量になっていた、なんて例もありました。Drの中には、この「セフェムだったら朝夕2回」というのが頭にこびりついているんですね。だからどんな症例でも朝夕二回で投与する。カルバペネムを投与するときも同じで、やっぱり朝夕二回。ひとつの原因として、あのSIR判定が原因かなあとも思わないでもないんですが、この話しはまたこんどに。

閑話休題。

で、最終的にCTRXを使いだすんですが、これもやっぱり1gを朝夕二回で使うんですね。ところがこれは正しい(?)使い方で、CTRXはセフェムの中でも特に半減期の長い薬剤で、これが最大の特徴とも云えます。2gを24時間おきに投与、なんて使い方も出来ますし、HACEKグループの感染性心内膜炎ではこのような処方になりますね。CTRXは12時間おきで十分なのです。だからちゃんと効いてくる。Drからすれば「ロセフィンを使ってよかった」となります。「いやー、誤嚥性肺炎にABPC/SBT使ったんだけど無効でさー、CTRX使ってようやく治ったよー」みたいな話しになってくるわけですね。口腔内の嫌気性菌をABPC/SBTでどうにかしようとするとちょっとover dose気味に使わないといけませんが、例によって例の如く、少な過ぎたわけです。で、CTRXに変更してみる。CTRXも横隔膜上嫌気性菌をあらかたカバーしますので、誤嚥性肺炎にはいい適応になると思います。1g朝夕二回で十分な効果を発揮する。すると肺炎が軽快する。使ってよかった、ということになる。こんどから、肺炎にはCTRXだ!という思考になってくる。こういうことかなあと思ったりしています。

根本的な誤解は刷り込みが行われる前に解いておかなければなりませんが、それがなかなか難しいわけです。菌血症の治療は第三世代や第四世代でしか治療出来ない、とか、セフェムは世代が上がるにつれて抗菌力が増していく、とか。PCGは弱い薬だと信じているDrのなんと多いことか!こまったことです。