市中型MRSAの判定について

市中型MRSAについては、各種記事を参照してください。通常、黄色ブドウ球菌*1の病原性はコアグラーゼが担っていたと思うのですが、この市中型は高確率でロイコシジン*2を産生するようです。これが市中型の強烈な病原性を特徴づけている要素のひとつのようですね。

この市中型MRSAは病院由来ではなく、本当に市中で耐性化した黄色ブドウ球菌のようです。このような黄色ブドウ球菌は世界中で見つかっていますが、それぞれ特徴的な遺伝子型をしており、日本のそれはロイコシジンを作らないタイプが多いと云われています。

日本で見つかる市中型の薬剤感受性パターンとして、ペニシリン・セフェム以外の薬剤には感受性を示すパターンが多いようです。ただマクロライドが頻用される日本の事情として、EMあたりに耐性を示す株もちらほら見つかるとか。台湾ではEMもCLDMも耐性のようです。ロイコシジンが陰性であることを含めて、これはアジアの特徴でしょうか。

感染の多くは軟部組織感染症として見られます。これはもともと黄色ブドウ球菌がそうなので当然でしょう。健常成人よりは小児で多く見られるのも特徴です。いまのところ血流感染は見られません。困ったことに定着しやすい菌なので、感染様式はS.pneumoniaeやH.influenzaeなどと似ているのではないかと思われます。まあ具体的に書くのは控えますが。

検査で確定するためにはPLV遺伝子もしくはSCCmec遺伝子を検出しなければならず、通常のラボでは無理でしょう。そして検出されたMRSAすべてを遺伝子検査するわけにもいかないので、結局日常診療レベルでは市中型を検出するのは難しいという結論になります。感受性パターンから推測するか、症状から判断するしかありません。困ったもんだ。

*1:S.aureus

*2:白血球を破壊する毒素