パッチテストの不思議

投与後にアナフィラキシー・ショックを起こすことで有名な抗生剤と云えばペニシリン。このアナフィラキシーを回避するために行われるのが皮内反応試験、いわゆるパッチテストですが、じつは
パッチテストでアナフィラキシー・ショックの判定は出来ません。

サンフォードにもきちんと明記してあります。信じられない人は、立ち読みでも何でもいいのでぜひ確認してください。代表的なペニシリン・アレルギィであるアナフィラキシー・ショックは、じつは皮内反応試験では予測することが(ほぼ)出来ません。理由は簡単で、じつはアナフィラキシーを起こしている物質はペニシリンそのものではなく、ペニシリンが肝臓で代謝された後に出来る物質が原因であることが多いからです。皮内反応試験ではペニシリンそのものを用いるため、このようなテストはほとんど無意味です。

もちろんペニシリンそのものに反応する場合もあり得るので、そのような場合には有用でしょう。しかし、偽陰性も多く見られるため、皮内反応試験がマイナスだからといって安心出来る材料にはなり得ません。つまり、皮内反応試験がマイナスであるということは、免罪符にはなり得ないということです。ペニシリンを投与した場合は、十分に患者を観察することがまず第一になります。この皮内反応試験そのものを実施することが患者に採って有益かどうかは、施設ごとの判断になるかと思います。

ちなみに現行では皮内反応試験を行わずにペニシリンを投与してアナフィラキシーが起きた場合、裁判では負けるかもしれません。皮内反応試験をやめるのであれば、施設単位で取り決めを作る必要があるでしょう。