Clitical colonization...?

こういう病態……というか、状態かな、こういう状態に対する名称があるということを知らなかったんですが、夏井睦先生がHPで疑問を呈しておられます。細菌がバイオフィルムをつくって創面に定着した状態で創の治癒は遅延すると考えられているようですが、これはちょっとおかしいんじゃないかと思います。私も自分の傷にラップを巻いたことがありますが、創面にはわんさか菌が発生します。これは絶対に発生します。おそらく発生しない傷はないはず。そしてたいていS.aureus(黄色ブドウ球菌)です。これはS.aureusが総合的に見て生存競争に適した菌だからだと思われますが、たいていの場合、菌がわんさかいても痛くないのです(これ重要)。

私は培養してたしかめましたのでまず間違いないと思いますが、やつらは創面にびっしりと定着しています。少なくとも、患者さんが病院に受診して、その検査結果と同じ程度の精度で、これは確かです。私はこの傷から(かなり抉れた、エグい傷でしたが)感染したりはしませんでした。免疫はしっかりしていますし、まだ若いせいもあるかもしれませんが、しかし傷口に悪名高き黄色ブドウ球菌が4+で検出されても感染していなかったのです。これは面白い事実だと思います。量が増えたから感染である、という考え方は、おそらく実際の臨床でも成立しないのではないかと思われます。科学的にも、ちょっと根拠が薄弱ではないかと。

あ、そうそう、臭いは当てになりませんよ。菌がいるからには菌が生活しているわけで、菌が生活しているからには菌が産生する物質の臭いがするのは当たり前だからです。従って、私の創からも「あの」S.aureusの臭いがしました(エグい話や)。

というわけで、個人的には面白いと思うんですね、この分野。もっと体系的に研究されれば、いままでの感染症に関する知識がかなりの部分ひっくりかえるんじゃないかと期待しています。これだから、研究というのは面白い(研究そのものもの面白いが、誰かの成果を読むだけでも面白い)。