目的と評価

「その境遇に対する、君の考えは?」僕は尋ねた。
「境遇に対する評価は行いません。目的が設定されて初めて、それを実現するための環境を評価することができます」

森博嗣 著: 「血か、死か、無か」

目的は大事なファクタだ。目的を定めることで、はじめて組織で仕事ができると云ってもいい。決しておざなりにしてはいけないはずなのに、「まず目的をはっきりさせましょう」とか、「目標、方針をはっきりさせましょう」という提案をすると、まず間違いなく、放置される。目的や目標は、ただのお題目に過ぎず、何を為したかだけが重要であると思っている。だからそんなことに時間を割くのは無駄なことで、さっさと仕事に取りかかりましょう、というわけだ。

まあ、ある意味ではその通りで、個人プレーではまったく問題は生じない。だが、ヒトの入れ替わりのある組織やグループで仕事をするためには、方針や目標、目的といったファクタが、とても重要な意味を持つ。目的に照らし合わせて環境を評価する、という考え方は、とても大事なことなのだ。ゴールを設定せずに、どうやって歩き出すというのだろう?どっちに向かって歩き出すというのだろう?

方針に照らし合わせて環境を評価する。だからこそ、方針がしっかりとブレないものでなければならない。方針が穴だらけでだれも説得できないものであれば、行動にも説得力や共感は得られまい。