驚異のギャグ小説

みなさんはこの驚異のギャグ小説、「リアル鬼ごっこ」をご存知だろうか。破綻した時代設定、暴走した文章、支離滅裂のストーリィ展開をもつ、空前絶後の(ギャグ)小説である。いちおうまともな小説のはずなのだが、あまりにぶっとんだ設定と文章で、はからずもギャグ小説としか云いようのない、珍妙なものに成り果てている。たしかトンデモ本の世界で紹介されたことがあると記憶しているが、細かいところは定かではない。

この「リアル鬼ごっこ」が映画化するらしいという話しを聞いて、おもわず口の中のものを吹き出してしまった。いやあ、すごい。こんなものに手を出す物好きが存在しているなんて、世の中は広いなあ。なぜか100万部も売れてしまった「リアル鬼ごっこ」なのだが、読んでみればわかるとおり、まるっきり商業レベルの出版物としてのレベルに達していない。ところが、どうやら中高生あたりを中心に(それとネット人口を中心に)話題になったらしく、奇跡的に売れてしまったのだ。私のこの本の評価は「読んで笑って、すぐに捨ててしまえ」で、捨てるタイミングは各自におまかせである。決して最後まで読み終えなさいとは云わない。なぜなら、そんなことを云うと、拷問になりかねないからだ。たとえ斜め読みしたとしても、普通の神経には耐えられるものではない。

……と思っていたのだが、意外に固定の読者がいるらしく、著者の山田悠介氏はどんどん新作を出版している。ドラマ化されたり、舞台活動をしていたり、活動の幅は狭くない。

……正直に云おう。ものすんごく正直に云おう。

俺にはなぜだかぜんっぜんわからねえ!

決して小説として褒められるレベルではないのに、なぜか売れているのである。小説として評価されているとは思えない。いや、もしかしたら、私の小説に対する感覚がおかしいのだろうか。私の文章に対するセンスが異次元レベルなのだろうか。漢字に対するセンスが破綻しているのだろうか。とにかくこの不思議な発行部数を見ていると、自分に対する疑心暗鬼にとらわれてしまって、とても健康に悪いのである。

とまあ、こんな調子で自分に対する疑心暗鬼にとらわれていたのですが、世間様ではちゃんと「トンデモ本」として評価されているようで安心しました。売れるのはいいことですし、このような小説が出版されること自体に異論はありませんが、買って読むことは絶対にありません。

さいきんの本ではちゃんとまともな文章になったのかなあ……それはそれで面白くない気がするけど。