A群溶血性レンサ球菌感染症

外来の医者から、劇症型A群溶血性レンサ球菌症の患者に噛まれた、どないしょー、と電話があった。うーん、噛まれた……噛まれた、ねえ?即座に感染するとは思えないけど、外傷があると別の意味でなあ……

内容にちょっと驚いたが、まあ気を取り直して。

  1. A群溶血性レンサ球菌感染症
    • 基本は小児の急性咽頭炎
    • 猩紅熱の原因菌でもある
  • 劇症型は壊死性筋膜炎を伴う軟部組織感染症
    • 劇症型を見たら、脊椎反射で外科医呼んでオッケ。あとは外科医がデブリドメン。
    • 使う抗生剤は、PCG+CLDM。
    • 不安なら、皮膚科医あたりにコンサルタント


噛まれたくらいでは劇症型を呈したりはしないでしょう、たぶん。
なお保健所への届け出は症状があることが前提ですので、噛まれたくらいでは必要ないかと思われます。劇症型の患者はとうぜん届け出義務がありますが。


気になるなら、常識的な範囲で薬を飲んでくださいと云いました。私は医者ではないので必要かどうかはわかりませんが……おそらく不要ではないでしょうか。この場合、マクロライドは耐性が心配されますので、ペニシリンアレルギーがないならAMPCあたりが適当かと想像します。もちろん傷口を消毒するのが先決であり、それ以上の処置はいらないでしょう。

どうも患者の病態を見たらしいオペ室のナースがおびえていたので、感染対策は標準予防策以上のものは必要ないということ、咳や痰がひどいようなら飛沫感染対策をしてくださいと伝えました。あと体液が出るようであれば、接触感染予防策も講じるとよいでしょう。つまり、標準以上のことをする必要はありません。隔離も必要なし。髄膜炎と同じく生きるか死ぬかの驚異的な感染症ですが、髄膜炎と比べて見た目がひどいのよね、こっちは。


というわけで、A群を治療する場合、ペニシリンアレルギーがあってなおかつA群がマクロライドに耐性だったとき、いったい感染症屋さんは何を使えばいいのだろうという猿のような疑問が浮かんでくるわけですが、本にはクリンダマイシンあたりはどうか、みたいなことが書いてありました。飲み薬だと、そこらへんがベストなのかなあ。