監視培養の意義を問いたい

まあ、なんと大げさなタイトル(笑)。

私は血液疾患や免疫不全状態の監視培養に対しては、やや否定的な意見を持っています。場合によっては、するべきではないんじゃないかとも考えています。いくつか明確な理由がありますが、おおむね監視培養をしてもいいかなと思えるのは、臓器移植患者や耐性菌保菌者……くらいでしょうか。耐性菌伝播の監視という意味合いでは、ICU患者さんに対しては、条件が揃えば実施してもいいかもしれません。ケースバイケースじゃないかと思います。

監視培養をやらない、知らないというまっとうなかたのために簡単に書きますと、監視培養というのは週に一回くらい定期的に咽頭や尿、便などの培養を実施して、変な菌がいないかどうかを確認するための培養のことです。術後ドレーンには「治療」「廃液」「情報」の三つの意味があったと思いますが、これで考えるなら、「情報」を得るための培養ですね。治療的な意味はありませんし、予防的に膿瘍をドレナージするひとはいないでしょうから、「廃液」としての意味もないでしょう(IVH抜去記念のカテ先培養はこれかも)。従って、監視培養の意義を考えるのであれば、得られる「情報」の精度や臨床的な意味を云々する必要があるはずです。

たとえば、喉から耐性菌、そうですね、MRSAが検出されたとしましょう。どうしますか?VCMで除菌する?ほっておく?たいていの治療者は、放っておくを選択するでしょう。感染を起こして悪さしているわけではないからです。しかし、この監視培養は、「未来に向けて悪さする可能性のある菌を検出する」ことを目的としています。従って、このMRSAはいつか訪れるかもしれない未来で悪さをするかもしれない。それがいつかはわかりませんが、もしかしたらそうかもしれない、そういう意味を持ちます。

これがどうにも具合が悪い、と思うのです。

このMRSAは将来悪さをするかもしれませんが、しないかもしれません。もしかしたら、別の菌が悪さをするかもしれませんが、そんなことは実際に起きてみないとわかりません。わからないのであれば、実際にことが起きてしまったときに、もしかしたら外れているかもしれない情報を当てにして治療を行うのでしょうか?過去にMRSAが出ている患者さん、白血球がドンと下がってDICを起こしているのでVCM始めました!という例はいくつも見てきましたが、当たっていることもあるけれど……ってところです。個人的な感想としては、監視培養の結果と実際に重症化する感染症との関係は、あまり強くないという気がしています。

それもよりも、シチュエーションごとに抑えておかないといけない微生物のリストが頭に入っていない臨床医が多くて困ることがあります。覚えていたらそれで終わりなのに、なんでなんだ。