見立て狂い

救急の肺炎患者。珍しく救急担当のドクターがグラム染色を見に来ました。

60歳、女性。肺炎様症状で救急を受診。痰は吸引したものを綿棒にくっつけて持って来たため、外観の評価は不明。顕微鏡下で白血球多数、扁平上皮多数。Geckler分類でG3の痰。口腔内の常在菌で汚染されすぎて、グラム染色標本としては評価しようがないようなスライドでした。口腔内の常在菌と思われるグラム陽性球菌が多数、わずかにS.pneumoniaeを疑わせるような双球菌が見られましたが、気にしなければならないような量とは思いませんでした。レントゲンは右下葉から中葉あたりにかけての浸潤影(と云っていた)。喫煙歴あり(現在も)。二日前まで温泉旅行に行っていた。

背景にHaemophilusを思わせるグラム陰性の短桿菌がもっさり見えたので、Haemoかなと思ったのですが、貪食像が見つからない。もともと貪食されにくい菌なので、こんなものかと思って「Haemoが見えます」と報告しました。私が見る前にドクターも見ていたのですが、そのドクターは肺炎球菌が見えると云います。見えると云えば見えるんだけど、S.pneu肺炎と云えるほどは見えないなあと思ってHaemoだと思いますと報告したのですが、これが大ハズレでした。

翌日出て来た痰を染色してみてびっくり。なんと、そこかしこにS.pneumoniaeが見えるではありませんか。もう「やられた!」という感じで、すごく悔しかったですねえ。最初に見た痰が扁平上皮だらけで評価に値しない痰だったとはいえ……

。・゚・(ノД`)・゚・。


(悪寒・戦慄はない。全身状態は、重体とまではいかないものの、そこそこ悪い。レントゲンが肺の区画をまたいでいる、などの条件からS.pneumoniaeの可能性は低いのではないかと判断したのですが、超ハズレでした……つまり、患者に常在していたHaemophilusを起炎菌ではないかと見誤ったわけです)