StreptとEnteroを見分ける

いつもは出来るだけ私自身が確認していないネタは書かないようにしているのですが、同じようなことをやっている人がいたらいいなと思ったのでちょっとだけ書いてみます。

血液培養が陽性、グラム染色でレンサ球菌が見えたとしましょう。レンサ球菌が見えたら、たいていの場合はStreptococciかEnterococciです。Streptococciなら抗生剤はほぼ何でもOKですが、Enterococciにはセフェムがほぼ全滅です(CZOPもやめたほうがいいですよ)。このふたつ、なるべく早めに見分けられたらいいなと思いませんか?

グラム染色で見分けることは不可能ではありませんが、あいまいなグラム染色上の形態所見を根拠に診療を進めるのは困りモノではないかと思います。というか、コワくてそんなことできません。私は以前から「レンサ球菌を見たら問答無用でABPC」と考えていますが、すでにセフェムが投与されていた場合、なかなか確信的な根拠もなしに、「抗生剤を変えてください」とは云いづらいものです。そこで考えてみたのが、この「Enterococciにはセフェムが効かない」という性質を逆手にとった(?)方法で、菌液を培地に摂取したとき、セフェム系のディスクをいっしょに置いてやるというもの。第一世代のディスクがいいかなと思っていますが、ウチにはありませんので、仕方なくCMZを置いています。おそらく、CTXでもCAZでも、なんでもいいんじゃないかと考えていますが、いまのところ確たることは不明です。まだ数例しか経験していませんが(レンサが血培から出てくること自体が珍しい)、ときどきEnterococciが小さい阻止円を作るので紛らわしいものの、ある程度の信頼が置ける結果を出しています。

つまり、
※EnterococciとStreptococciを見分けたい

  1. CMZのディスクを置いてやると……
    • Streptococciだと、阻止円が出来る(CMZが効いている)
    • Enterococciだと、理論上阻止円は出来ない(すべてのセフェムに耐性だから)

というわけで、理論上は阻止円のあるなしでどちらかを見分けることが出来るはずです。ある程度の信頼の置ける結果ではないかと考えていますが、鵜呑みにして失敗した例も数例あったりして、結果の解釈にはいまのところ慎重派です。

もしかしたら、阻止円の有無うんぬんであれば、CTXやCTRXなどの第三世代のほうがいい結果を出すかもしれません。CZOPはダメです。E.faecalisに対して活性を持ちますので、おそらく阻止円が出来るでしょう。CFPMも多分ダメ。第四世代はやめておいたほうが無難です。同じことをやっているひとがいたらいいなと思って書いてみました。経験豊富なかたがいらっしゃいましたら、感度特異度あたりを教えてくださいまし。

ま、コロニーを作っているんだったら、Lancefield抗原をとったらいいんですけどね。D群だったらEnterococci。こっちのほうが確実だけどごくごくマレに例外があり、さらに一回一回の値段が高くついたりするもので……