迅速検査

血液培養なんかは陽性になったら大事で、こちらとしても早く結果を返してあげたいんですが、ナマモノを扱っている関係上、そうそう迅速に結果を返したりはできないものです。だからせめて抗生剤が効くか効かないか、出てくる可能性の高い菌は何か、グラム染色の所見はどうか、などを総合して、臨床側に貢献出来ないかと考えるのですが、さいきん地味ーにむなしいのが、「こっちが早く結果を返しても、抗生剤を変えるつもりないよね?」ってことなんですね。

大半の主治医が、最初に使った抗生剤をそのまま使い続けるようです。少なくとも、私はいままでに一度も(ただの一度でさえ!)主治医がDe-escalationした実例を知りません。効いていなければ変えたらいいや、くらいにしか思っていないようです。つまり、カルバペネムを最初に使っていたら、そのままカルバペネムで押し通すわけですね。良いことなのか悪いことなのか、カルバペネムに耐性を示す菌は種類が限られていますから。

だったら、検査が迅速に結果を返す意味って何なんだろうと地味ーにむなしくなるわけです。レンサ球菌にPAPM/BP、初期はそれでいいでしょう。でもそれがS.pneumoniaeじゃなく、腸球菌だったと判明したら、それで抗生剤を変えるべきなのではないでしょうか。お金もかかりますし、いらん耐性菌も出てきます。菌交代も起こしますし、下痢もします。カルバペネムを使い続ける理由など何もないはず。とくに血液培養は分かりやすいので、感染フォーカスがある程度推測出来れば危険性も推測出来ると思いますし、積極的にDe-escalation出来ると思うのです。

気持ちが落ち込んでいるときには、些細なことにむなしさを感じるようです。働き始めて最初の三年で刷り込まれたことは、生半可なことでは消えません。感染症に興味のある研修医の先生方は、ぜひ「De-escalationが出来る指導医」を探しましょう。私もDe-escalationする先生と、いろんなことが話してみたいです……