食中毒の三原則

この休みは院内広報の原稿を書いていたのだが、どうやら体調不良だったらしく、やっているウチに頭が痛くなってきて、少しだけ検体を片付けてさっさと切り上げてしまった。さいきん麻疹が流行っているのだが、これはやはり広報に書いておかねばならないだろうと思い、その下書きを書いていたのである。あと気になる検体があったので、培養結果を確認したかった。朝は調子が良かったのだが、しばらくして頭痛が始まり、だんだん気持ちも悪くなってきた。下書きだけは仕上げておかないと今月は予定がいっぱいいっぱいなので、仕方がなかったのだ。若干の虚しさを感じるが、もうほとんど諦めている。

それをきょうプリントアウトしてみてもらおうとしたのだが、そのプリントがおかしいのである。いや、おかしいというか、何だ、書いていることがむちゃくちゃなのだ。首を傾げて考え込んでしまったのだが、頭がぼんやりしてしまって、あまり書いたときの記憶がはっきりしない。前半部分はまともに話しが展開しているのだが、後半部分が明らかにおかしい。どうやら最後のあたりになってやけくそになったらしく、食中毒をネタにした話しのスジと食中毒菌がメモ書き程度に列挙され、混沌とした様子になっていた。で、たぶんとつぜんめんどくさくなったのだろう(もしくは虚しくなったのかもしれない)、「食中毒の三原則」と走り書きがしてあり、そのあたりでメモは終わりになっていた。繰り返すが、あまり書いた記憶がはっきりしない。

  • 食中毒の三原則
    1. 菌を付けない
    2. 菌を増やさない
    3. ヌッ殺す

なんだ、そのヌッコロスってのは?しかも「予防の三原則」だろうが。

殺滅するとか何とか、他にも云いようはあっただろうに、よりにもよってヌッ殺すってのは何だ、オイ。しかも上司に見せるためのプリントに、よりもよってヌッ殺すってのは何だ、オイ。まじめに書く気があるのか、俺様。

ひとしきり自分に突っ込みが入った後、ふと気になって続きを読む。若干ワケのわからんことを書き綴ってあるが、まだまともなことを書いてある。ヌッ殺すはいただけないが、趣旨は間違っていない。

サルモネラ、シゲラ、キャンピロバクター腸管出血性大腸菌0-157、腸炎ビブリオ……どきどきしながら読み進める。これはメジャな食中毒系の細菌だ。夏場に増えてくるので、これからの季節は要注意である。うんうん、まだまともなことを書いている。とくにキャンピロバクターなど、医師が疑って検査室に情報提供をすることが重要だとされる菌である。検査技師はあまりドクターから情報を得られることを期待していないため、ラボによっては自主的にキャンピロ検索をしているところも多いであろう。院内広報に書くことは重要なことだと思う。まあキャンピロはあまり季節が関係ないかもしれないが……

続きを読む。読んで思わず吹き出した。その続きには何故か、
超兄細菌とプリントアウトされていたのである。
なんだ、そのめっさ暑苦しい菌は。

ひとしきり考えた後、ミスタイプだと気がついた。つまり、

  • tyo u nai sa i ki nn(腸内細菌)
  • tyo u ani sa i ki nn(超兄細菌)

というわけだ。直す気も起こらなかったのであろうか。自分のやったことながら、ワケがわからない。

いちばんワケのわからなかったのは、

ゲロリスト逮捕!

と最後に書いてあったことだ。何だ、ゲロリストって。いや、ここに書いてあったネタなんだが、それをこのまじめくさって書いていたはずの原稿に書いてあったという事実が意味不明。

話しのスジを走り書きしたのだと信じたいが、これから導きだされる話しの展開に想いを馳せると空恐ろしい気持ちになるのはなぜだろう?

ってか、ほんとに自分が書いたんだろうな、コレ……そのわりに覚えのないことが多すぎるぞ?