リウマチ患者の膿性痰

最初に断っておきますが、これは実際の症例をいじって作った、架空の症例です。お約束ですね。

というわけで、スライドを提示します。

概観はP3、Geckler分類できれいなG5の膿性痰です。別の疾患でフォロー中に増悪したらしく、培養が提出されていました。スライドを引いてグラム染色をしたところ、このような染色像。フレッシュな多核の好中球がもっさり、背景にフィブリン糸がたくさん見え、このようなまだら模様の分岐したグラム陽性桿菌が見られました。調べてみるとステロイドが使われていたりして、まあなんて教科書的な症例なのでしょうか。定番として、このような染色像を見たときにはキニヨン染色でしょう。

というわけで、キニヨン染色した像がコレ。

きれーに陽性に染まっています。一般的にまだら模様に染まるグラム陽性桿菌はNocardiaかActinomycesを疑うところですが、キニヨン染色で陽性に染まるものはNocardiaの可能性が高いです。この場合は真菌専用の培地に接種して、一週間は培養して観察すると思います。第一選択薬はST合剤ですので、検査側としては臨床側にそのことを伝えるべきでしょう。キニヨン染色陰性の場合はActinomycesの可能性があり、嫌気性菌培養を追加しなければなりません。いずれにしても、検査結果は主治医に連絡すべき事柄です。グラム染色万歳。

ちなみに、キニヨン染色は本によって記載内容がころころ変わる、よくわからない染色です。脱色には硫酸水を使うのですが、その硫酸水の濃度すら記述に差があり、検査者としてはどうやったらいいのか、よくわかりません。抗酸性の解釈にも困ってしまいます。とりあえず今回は、

  1. カルボールフクシンで5分染色(加温せず)
  2. 1%硫酸水で3分間脱色
  3. メチレンブルーで1分間後染色

という方法をとりました。「ひと目でわかる微生物検査アトラス」を参考にしています。

まあ綺麗に染色出来たので、これからこのレシピでいこうかなと思っています。誰か標準法を作ってください。

もうひとつ。
Nocardiaの抗酸性は使用している培地に左右されます。コロニーから染色してうまくいかない場合、小川培地などの脂質を多く含む培地で純培してみるのもひとつのテです。過去に一度だけ、これで染色性を確認したことがあります。Nocardiaはややこしいので、あまり見たくないですね。