自由きままな一人旅 〜 BRM102 高松400 〜

南阿波サンラインはとてもよいところだ。自転車乗りなら、機会があれば立ち寄って損はない。

南阿波サンラインを抜けて、コンビニで少し休憩するために日和佐のコンビニに立ち寄った。ちょうどお昼時で、日和佐の道の駅は初詣の参拝客でごったがえしている。わいわいがやがやと、普段からは想像できないにぎわいだ。じつは私は子供みたいに屋台のりんご飴が大好きなのだが、さすがにブルベ装備で、りんご飴を買うために屋台に並ぶのは(主に人目が)憚られた。この調子だと、食事処も満員でゆっくり食事どころじゃないだろう。ゆっくり昼休憩は諦めることにした。ひとでごった返したコンビニ前でぐったりしているのも人の目が気になるので、そうそうに日和佐を旅立つことにする。

が。

ここから延々コンビニが見つからず、そのまま峠を越えて、20kmほど山道を走り続けるハメになったのは誤算だった。もうお腹が減ったというか、休憩したい。休憩というか、休みたい?休みたいというか、メシ食いたい?あ、でもなんかお腹の調子よくないっぽいから、一刻も早くゴールしたい?でもそんな気力も体力もない?じゃあやっぱり休憩したい?

延々と、その繰り返しだ。山を抜けてコンビニが見えたとき、迷いなく飛び込んだのは云うまでもない。

面白かったのは、このコンビニが面白いほどに「ランドヌールほいほい」だったことだ。慎重に昼飯を食べながら(一気に食べると吐きそうだった)ずっと観察していたのだが、私が観察していた間にここを通過しようとしたランドヌールのうち、じつに8割以上がこのコンビニに吸い込まれてきた。みんな考えることはいっしょだったと見える。というか、みんな疲れて思考が単純化されているのだろう。

そこでいっしょになったランドヌールと、適当に話をしながらごはんを食べる。男性だったが、その方は、この高松400がブルベ初挑戦だったそうだ。お、私以上の変態発見。初めての400に高松を選んだ私もたいがいだが、ここに私以上の変態さんがいたヨ。ブルベ初挑戦の舞台に、真冬、夜スタート、400という三重苦を選ぶとは、おぬしも大概よのぅ。

……なんて面と向かって云ったわけではないのだが、それでもブルベ初挑戦で400を選択するとは、400という距離を走りきる自信はあるのだろう。そのあともう少しだけ話をして、長居をするわけにもいかず、挨拶だけしてとりあえずコンビニを旅立つことにした。

あとは一人旅だ。前にも後ろにも、走者はいない。

基本的に、私は一人旅が嫌いではない。静かな山の中を、一人で走っている時間は何物にも代え難い。ひとりだと心が折れやすいし、ペースを保つのが難しいこともあるが、コースさえしっかり把握していれば、私自身は一人旅はむしろ好ましい。ときどき前の走者をつかまえることもあったが、挨拶だけして、基本的にはすべてパスした。休憩所やPCなどでタイミングがあった人達と、ゆるゆるとゴールを目指す。

300kmを超えると、もう、いっしょに走っている人達が無条件に「戦友」に思えてくるから不思議だ。少なくとも、「困難をともにした仲間」という意識が芽生えてくる。そんな困難に首を突っ込んだのは自分なのに、同じ方向を向いて走っている反射ベストは無条件で仲間に見えてくるのだ。不思議なものだと思う。

PC3を超えて、もうタイムアウトの心配はほとんどない。足切り君は遥か彼方に置いてきた。あとはずきずき痛む自分の脚と相談しながら、確実にゴールを目指すだけ。PC3でレシートをもらって、二度目のナイトランに備えて、ライトの電池を予備に交換する。

残りは70km。鋭く痛む膝が気にはなったが、もうここまで来たら、残りのコースに大した山はない。あとはフラットコースを淡々と走りきるだけだ。