決して年末年始にドツキあうβラクタマーゼではない。
K.oxytocaが産生する染色体性βラクタマーゼ(chromosomal β lactamase)の一種である。白状すると、これを確定するための直接的な試験方法は、私にはわからない。同定菌名がK.oxytocaで、かつTAZ/PIPCが高度耐性、CTX、CFPMあたりが中等度耐性程度であればK1βラクタマーゼの可能性を示唆するが、だからといってそれを根拠に確定するにはやや弱い。やはり単一の試験法が欲しいところだが、私の知るかぎり、ESBLsときっちり鑑別できる単一の試験はないようだ。
このK1βラクタマーゼ、CVAで阻害がかかるため、DDSTを実施するとあたかもESBLのように判定されてしまうことがある。自動分析機がESBLだと結果を返してきて、DDSTの判定が陽性であったときに、はたして正確にK1βラクタマーゼの存在をESBLsと鑑別できるだろうか?
じつは知らないと困る類いのものではないようにも思うが、そこは検査技師としての性である。
K1βラクタマーゼの性質
- ClassAに属する。
- CVAで阻害がかかるが、SBTで阻害がかからない。
- PIPC/TAZに高度耐性を付与する。
- 第三世代(とくにCTX、CFPMがわかりやすい)が意外にMICが低く、中等度耐性あたりで判定される。しかし、これは酵素量に左右されるため、一意的な性状ではない。
- 基本的に、第一世代、第二世代に耐性である。ただし、CMZはアウトなのかどうかわからない(知らない)。
判定方法(私見)
- 前提として、K.oxytocaであること。
- TAZ/PIPCが高度耐性であること(ESBLsには見られない特徴のひとつ)。
- CTX、CFPMに中等度耐性であること(絶対条件ではないが状況証拠のひとつ?)。
- DDST(+)である(酵素量の如何によって結果が変わるかも?)
- A/CとCPDXの間に、まったく阻害帯が形成されない*1
まあ、話半分で……
基本的に、自動分析機ではESBLだと判定されると思いますので、このようなものもあるんだと知っておくことは、分析機に支配されないためには必要かと思います。問題は、治療の際にCAZの判定を「S」にするか、「R」にするかですが、これについて、私はよく知りません。MICの値に応じて判定するのでよいのではないかと考えますが、誰かご存知でしたらぜひ教えてください。
*1:Potz, N. A., M. Colman, M. Warner, R. Reynolds, and D. M. Livermore. 2004. False-positive extended-spectrum β-lactamase tests for Klebsiella oxy- toca strains hyperproducing K1 β-lactamase. J. Antimicrob. Chemother. 53:545–547.