武○邦彦氏って

武○邦彦氏って、いちばん有名になったのは環境問題について、独自の見解を本にして発表したことだろう。しかし、この本が用語の誤用、恣意的な引用、強引な解釈、はてにはデータの捏造までやってのけたという、きわめてちゃらんぽらんな代物である。

アカデミックな世界でデータの捏造をやっちまうと(そしてそれがバレると)、その後一生「そういう研究者」としての目がつきまとう。私はどーにも、このひとの発言が信用できないのである。

それと、自分の意見を音声データにするの、やめてほしいなあ。読むのに時間がかかるし、つっこみにくいし。サイトをときどき拝見するけれども、ときどき根拠のよくわからないことが書いてあって、解釈に戸惑う。たとえば、子供の放射線の被爆機会は大人の約三倍だとある。運動したり汚染食材をむりやり給食で食べさせられたりするからという理由付けがあるが、根拠不明瞭である。放射線に対する感受性が大人の約3倍だというのは一般的にも云われているところであるが、被爆機会が3倍というのはよくわからない。出典をご存知の方ががいたら教えてください。知りたい。これらのことから大人の「1ミリ」は子供だと「10ミリ」だと説いておられるが、具体的な数字を出すのはどうかと思われる。

たしかに、「ヨウ素を経口摂取した場合の甲状腺の等価線量に係る線量係数は、成人の場合3.2×10-4(mSv/Bq)、乳児の場合2.8×10-3(mSv/Bq)この値だけを比較すると、「約10倍」」となる。これを恣意的引用と云う(苦笑)。(注:事実を誘導的に部分的に記載することによって、あたかも前述の事柄が間違っているかのような印象を与える可能性がある)

よく「政府の云うことなど鵜呑みにせず、自分の頭で考えることが必要だ」という意見を見るが、正直なところ、自分の頭で科学的に筋道の通った思考ができているなど、ほとんどいないはずだ。専門家の意見を聞いて、ちゃんと文献を読んで、文献の孫引きまでして、論拠を理解しているひとなどまずいない。しかし、それが自分の頭で考えるということだ。それが出来ないのであれば、「自分の頭で考える」などというべきではないと思う。専門家の意見を聞いて、わかったような気になっているだけだ。それがいちばん危険なのだと、自分の頭で考えるべきだと主張する一部の人たちはなぜわからないのだろう?