九州ワンデイツーリング(別名修行ツーリング)5

フェリー乗り場に到着した私は、すぐにロッカーの荷物を取り出し、そこからタオルを引っ張りだした。そのままタオルを背中に挟んで、椅子にへたりこむ。そうでもしないと椅子が汗でべたべたになってしまうからだ。クーラーのよく効いた室内は天国のようだったが、ジャージに染み付いた汗はそれくらいで引いたりはしないし、椅子を汗でべたべたにしてしまうのはさすがにまずいだろう。

誰もいない待合室で天井をぼんやりと見上げて、クーラーの効いている部屋のありがたさを全身で感じる。全身を冷やされて、ようやく人心地ついた気分だった。ときどきクーラーは体に悪いなどと云って頑として使おうとしないひとがいるが、あれは明らかに間違いだ。程度問題だが、過度の暑さを我慢する方がおそらく体に悪い。熱中症になればひとは死ぬし。

いま思えば、前回堪能できなかった別府の街をだらだら流すのも面白かったかもしれない。佐賀関でもよかったと思う。佐賀関からは四国に向けてフェリーが出ており、おそらく最短距離で四国に渡ることが出来る。いつかここを使って四国に渡ってみたいものだと思う。松山からしまなみに抜けたら、きっと楽しいだろう。いっそのこと、往路をフェリーで、復路を自転車でいくのも悪くないかもしれない。平坦路だったら、日本にはコンビニが至る所にある。それほど出力を上げなければ、たぶん熱中症の危険も減るだろう。いままでは山ばかりだったけど、平坦路をガッツリ走るのもいいな。

そうやって考えているうちに、だんだんと今回の散々だったツーリングも悪くはないという気がしてくるのが不思議だった。

旅先での失敗を反省はするが、それで懲りるということはない。たぶん熱中症で死にかけても、自転車旅をやめようとは思わないだろう。熱中症で死にかけたら、熱中症にならないためにはどうしたらよいかを学習するだけで、旅そのものをやめようとは思わない。失敗したからといってチャレンジを辞めてしまうやつがどこにいる?

フェリーが来るまで、あと二時間もある。ゆっくりと考える時間はあるのだ。
(実行に移す時間はないけど・・・)

ちなみに、この文章を書いている前日に、フロントキャリアのネジは車のシート部分の奥深くから発掘された。こんどはなくさないぞ。