キノロンというカテゴライズ

尿路感染症や感染性胃腸炎にGRNXやMFLXを投薬するひとがいます。どうやら、「キノロンだから使える」と思っているヒトがいるようです。主に開業医さんに、このような誤解が多いように思います。

保険の審査をしている先生は、「最近の開業医は添付文書も見ないのか」とぶつぶつ云っていましたが、まあ、気持ちはわかるというものです。GRNXもMFLXも、そもそも横隔膜より上にしか適応症がありません(MFLXは加えて皮膚感染症がありますが、第一選択としての使用は避けるように注意書きがあります)。これらの性質を知っていれば、そもそも発生しない処方内容です。

MFLXは尿路に出ない少し変わったキノロンで、当たり前の話ですが、尿路感染症には使えません。GRNXは呼吸器に特化したキノロンとでも云うべきもので、腸内細菌に代表されるグラム陰性桿菌に対しては、活性が劣ります。でも、そういう性質を知らない人からみたら、キノロンは「キノロン」なんですよね。
カテゴライズすると物事はシンプルになっていきますが、同時にこの手の間違い・勘違いも誘発します。診療上、誤診の元になるようなピットフォールにはみんな敏感ですが、この手の「間違えても結果的になんとかなっちゃう」系の間違いは、表面化しにくいのかみんな注意を払わないのか、正直なところ、多くがスルーされているような気がしてなりません。

 

2012年の診療報酬改定で「感染管理加算」が新設され、「病院」の感染対策や抗菌薬の適正使用は重点的にフォローがされるようになってきました。しかし、いま現在、院内で問題になっている耐性菌の多くが、じつは外来や他所の病院から持ち込まれているものです。もはや耐性菌の問題は「院内」だけで完結すべき問題ではなく、地域で取り組むべき問題になっています。とくに尿路から分離されるESBLは、ここ数年で爆発的な増加を認めており、これは全国的な傾向として認められています。

耐性菌の発生は、抗菌薬の使用量に関係があると云われます。おそらく外来で使用されるこれらの抗菌薬をなんとかしない限り、この耐性菌制御の試みは失敗するでしょう。それだけ、根が深い問題なのです。