ABKに引導を

ちょっと大げさなタイトル。

以前からABKの有効性に対して疑問を持っていましたが、その印象はいまでもぜんぜん変わりません。むしろ、「もうMRSAに対してABKは使うべきではないのではないか」とさえ思い始めました。理由は三つ。「そもそもABK単剤投与で軽快した例を見たことがない」、「投与理由に納得いかない」、「ABKの有効性を示すスタディを見たことがない」。

あまり大げさなことを書くとおしかりを受けそうですが、MRSA肺炎のフォローをしていて、グラム染色像が明らかに改善した例を(ほとんど)見たことがありません。これは大げさでもなんでもなく、MRSAの貪色像が消えた例を私はほとんど知りません。最近ではABKの投与を見たら、ABKをなんとかVCMに変更できませんかと提案してみる始末です。おかげさまで……かどうかは知りませんが、ここ一年くらいはABKの投与そのものを見なくなりました。VCMが使えないときはLZDを提案しますが、いい代替薬が存在することも大きな理由のひとつでしょう。

MRSAに対して、「ABKを投与しなければいけない理由」はほとんどないのではないかと思います。むしろ投与してはいけないのではないかと考えられる理由はいくつかありまして、「長期治療が予想されるMRSA感染症にアミノグリコシドはいかがなものか」、さいきんは一括投与が認められるようになって少なくなってきた「アミノグリコシドの分割投与はいかがなものか」など、あまりABKに対していい印象はありません。ABKを選択する理由は……尿路感染症、かなあ?MRSAの尿路感染症、ほとんど見ないけど……あとはグラム陰性菌との混合感染?ううむ。

個人的には、ABKはもはやルチンに使うべきではない薬剤ではないかと思い始めています。最近知ったのですが、ABKが承認されたのは、なんとVCMよりも早いのですね。「ABKが優れているという論拠を示すスタディが存在しない(あまり見かけない)」理由はこのあたりでしょう。ABKがVCMと比較して優れている、または劣ってはいないという根拠を証明したスタディが出てこないかぎり(しかも万人が認める内容でないかぎり)、MRSA治療におけるABKにはもはや引導を渡してしまっていいのではないかと思います。