日常的にサバを食している患者から摘出された白い生き物

いきなり■■■を見て欲しいと他部署から呼ばれて、いそいそと出向。

さて、これが件のブツの顕微鏡写真だが、いったい何なのか、おわかりになるであろうか。

アニサキスのケツである。ひゃー。

というわけで、内視鏡していた患者さんの胃壁に変なものが食い込んでたからつまんで取ってきた、たぶん寄生虫だと思うがこれがいったい何者なのか、同定して欲しいという依頼でした。どうやら別の疾患で内視鏡を突っ込んでいたものの、何か変なものを見つけてしまったので白黒付けたい、ということのようです。細っこい、生っ白いイトミミズみたいな体をした全長1cmくらいのムシで、生食漬けになっていたのですが、私が観察するかぎりではぐったりして動きません。っていうか、それもそのはず、「頭はちぎれた」らしく、尻切れトンボならぬ頭が取れちゃった「デュラハン」状態なのでした。飾りじゃないのよ頭は、はっはーん♪……ってコレどっからどーみてもアニサキスじゃねーか、感染症屋さんとしちゃ興味深いけど、微生物屋さんにどうないせいっちゃうねん。

というわけで、おもに寄生虫を扱っている部署と相談の上、もろもろの条件を考えてみたところ、「アニサキスだと考えられる」という結論の上、虫体に適当にカバーグラスを載せて顕微鏡で見てみることになりました。で、この写真。頭は取れてリアルデュラハン状態なので、この写真はケツのほうなのですが、消化管だと思われる構造物などがはっきりと観察でき、個人的にはよく取れたほうだと思っている写真であります。

接眼レンズから覗いて撮ったわりにはな!(わはは)

鯖が食べれなくなる余談

バッテラ好きは読んではいけない。

学生時代に新鮮なサバを数体バラしたことがあるんですが、そのすべてにアニサキスがうじゃうじゃと見つかりました。従って、ナマで鯖を食べるとかなり高い確率でアニサキスに襲われます。いちど冷凍すると死滅しますので、生で食べたければ冷凍しましょう。市販されているサバはたいていいちど冷凍されていますので大丈夫だと思いますが、朝一で市場などに出るサバはアニサキス満載ですので要注意です。

酢でしめるなどといいますが、都市伝説の類いです。いや、俺は大丈夫だったぞという方、運が良かったですね。取り出したアニサキスを酢でしめたところ、一時間後のアニサキスは元気いっぱいでした。醤油漬けにしたほうはぐったりしており、まだダメージがあったようです。それでも生きていましたが。

ま、短時間での酢漬け醤油漬けはやるだけ無駄です。夕飯にサバを食して、だいたい6時間後、従って真夜中に発症、QQ行きというケースが多いようです。ものすごく痛いらしいですが、経験はありません。ごくまれに、慢性的にアニサキスに暴露されるひとのなかには無症候性、ないし軽症例がいるのだとか。うーむ。