急性喉頭蓋炎

先日はとてもローカルな学会に参加していたのですが、あまりにもローカルすぎたのか、発表内容はいまいちでした。急性喉頭蓋炎なんかは一分一秒を争う怖ろしい感染症で、一歩間違うと一気に絶息して死に至ることもあるという、医療者の腕が生死を分けるタイプの感染症です。救急でこれが診断つかずに帰宅ということになると、かなり怖い事になります。

一般的に起炎菌はH.influenzaeと云われていますが、ようは蜂窩織炎を起こすものであればなんだっていいわけで(H.influenzaeで蜂窩織炎はあまり聞かないかもしれないが、小児顔面蜂窩織炎の原因になりえる)、起炎菌については私はよく知りません。発表では喉頭蓋炎を気管切開で救命したとなっていましたが、起炎菌については咽頭培養でS.aureusが検出された、とだけで終わっていました。S.aureusが起炎菌だとは思えなかったので質問でそこらへんを突っ込んでみたんですが、まだお若い方だったようで、ちょっと質問自体に戸惑っているかんじ。いまいち議論になりそうになかったので(時間もなく、全体的に長引かせると迷惑になりそうだった)、そうそうに切り上げました。

S.aureusが検出されて(MRSAかどうかの記載なし)、治療にはCZOPをつかったそうです。メインは気管切開だったとはいえ、感染症の発表なのに、咽頭からS.aureusを検出した、これだけしか菌に関する情報がなかったのです。CZOPで加療したというのはあとで質問で聞きだした情報で、なんともお粗末な話でした。だいたい急性喉頭蓋炎を疑っておきながら咽頭培養を行ったというのもありえない話で(咽頭をこすった刺激で気道が塞がる可能性がある)、血液培養に関する記載もありませんでした。MRSAかどうかも記載なしで、うーんという感じです。

そのことにフロアからの質問が出なかったことも不思議です。うーむ。

あとは感染性心内膜炎の治療にPCGを持続点滴した、という話でした。筋注用しかないはずのPCGを点滴に使っていたという発表に対して「(本当に)PCGを使ったのか。ABPCを使ったのか、どっち?」という質問が飛びましたが、質問に対する返答は「ガイドラインではPCGを治療に使う」「静脈注射にも使える」というもの。質問者は「PCGは筋注用であり、静脈注射の適用がないが、そのあたりをどうやってクリアしたのか」と聞きたかったんじゃないかと思いましたが、発表者と(もしかしたら座長も)質問の意図を理解していないように思えました。質問者もお若い方でしたが、この質問が出てくるという事は、たぶん感染症をよく勉強しておられるんでしょうね。

ちなみに、そのIEの発表では、夏場の暑い真っ盛りにPCG2400万単位を24時間持続点滴したそうです。再発しなかったそうなので、非常に不安定な物質であるPCGも、24時間点滴できるのかもしれません。