検査技師のための主治医問答

これから検査技師になるひとは、「検査技師なんて検査をするだけ」とは思って欲しくありません。ドクターや看護師にも、そのように思って欲しくありません。検査技師は検査を専門とするコメディカル職種ですが、看護師が看護を通して患者さんと接するように、検査技師は検査を通して臨床に関わる職種でもあると思います。

というわけで、検査を通してどれだけ主治医に物申せるか、というのを考えてみたいと思いました。最低限これだけのことが出来たらいいな、というエントリで、私の考えをまとめるために書いているようなものです。ガイドラインみたいに大上段から切り落とすような代物ではありません。抜けや間違いがあっても責めないでください(苦笑)。

ちなみに、例によって例の如く、これを参照することで発生するいかなる事象にも私は関与しません。当たり前ですが、自己判断で。

エントリNo.1<血液培養から酵母様真菌が出たよ>

これは意外に検査技師にも活躍の場面があります。本来あってはならないのですが、当院ではときどき活躍の場面があったりするので困ったものです。

  • 血液培養(+)でCandidaが見える
    1. Candidaが出ているという事実も重要だが、感染源を探すことのほうがもっと重要。通常、Candidaはコンタミではない。高濃度のブドウ糖液が流れる中心静脈カテーテルは微生物に汚染されやすく、C.parapsilosisは高濃度ブドウ糖液で増殖スピードがあがるという特技を持っているため、カテーテルの内腔に取りつきやすい。また、通常Candidaは弱毒菌であり、肺炎も起こさず、特定の感染症の原因菌となることも少ない。従って、技師側からは、中心静脈カテーテルの有無を尋ねることがまず第一歩だと考える。その上で……
      • カテーテルがあるなら、まずそこを感染源として考えてみたらどうかということを示唆出来るといい。
      • 通常、カテーテルが犯人であれば、抜かずに治療が完了することはないように思う。いままでカテーテルを抜かずに治療出来た例はほとんど見ない(マレにはあったが)。
      • 短期のステロイドではCandida血症を起こすことは少ないように思う。従って、いかにステロイドを使っていようと、カテーテルがあるかないかがもっとも重要視されるべきだと考える。好中球減少はハイリスクであり、一週間以上続くのであれば可能性十分あり。でもカテーテルがあるならやはりそこに取りついている可能性が高いためにカテーテルが第一容疑者である。「カテーテルの存在」+「好中球減少」はCandida感染の可能性がすこぶる高い。短期の場合の発熱は、むしろPseudomonas疑い。
      • 結論的に、Candida血症の場合は、どのようなシチュエーションであれ、カテーテルが第一容疑者としてあげられる。大半のケースにおいて、カテーテルが存在する。

まずカテーテルを指摘できればいいんじゃないかと思います。通常、主治医はカテーテルの抜去に抵抗します。そこが患者の生命線になっているので、当たり前ですね。無理矢理抜け、なんて云うと主治医と喧嘩になりますので、指摘することができればいいんじゃないかと思います。

最終的には、カテーテルを抜去し、培養に提出してもらうのが目的です。カテーテルを抜去することで治療にもなりますし、培養を行うことでカテーテルの汚染を細菌学的に証明します。さらに出来るなら感受性試験を実施し、結果を報告することにより、治療に貢献出来るでしょう。

ときどき抜いたカテーテルを捨ててしまう主治医がいらっしゃいます。捨てるくらいなら培養に出してください。