血液培養から検出されたレンサ球菌

完全にしてやられた症例です。

左胸部痛を主訴に救急を受診した患者さん。左胸部に浸潤影があり、炎症反応もあり、感染症でしょうということで入院加療になりました。当初CAZを投与されていたんですが(理由は不明)、二日目からはABPC/SBTに。血液培養陽性で、グラム染色上はそれほど連鎖の強くないグラム陽性球菌、レンサ球菌が出てきました。

朝、血液寒天に接種して夕方観察したところ、緑色の溶血を伴う小さなコロニーが観察出来ます。培養時間が少ないので、コロニーの大きさは観察出来ませんでしたが、血液寒天に生えている様子から連鎖球菌、Streptococciだろうと推測されました。そこでランスフィールド抗原をとってみたんですが、C群に凝集が。ここで腸球菌ではないと判断し、中間報告として主治医に連絡しました。おそらくStreptococciなので、診断のつかない不明熱であれば、感染性心内膜炎も視野に入れてみてください、と。

ところが翌日、感受性試験結果を見てぶっとびました。なんとPCGが耐性。マクロライド耐性、テトラサイクリン耐性、キノロン感受性、見た感じパターンがS.pneumoniaeそっくり。自動機器で同定不能株だったのですが、しっかり培養したコロニーの様子も、どことなくS.pneumoniaeのように見えます。うげえ、こ、これは何ともマズい……

けっきょくオプトヒンテストなどを組み合わせて、最終的にS.pneumoniaeだと判断しました。もー、平謝りです。結局喀痰にも同一菌が見られ、おそらく肺炎→胸膜炎→血培(+)のパターンだったのかと思います。……C群に凝集が来た時点で、頭の中からきれいさっぱりS.pneumoniaeの可能性を消してました。グラム染色上、莢膜がまったく観察出来なかったのも油断の遠因です。完全敗北の一例なのでした。

ところで、S.pneumoniaeはランスフィールド抗原を持たないものだと思っていました。というか、こいつはC多糖体を持たないはずです。同定結果が間違っているのか、ランスフィールド抗原の結果が間違っているのか、それともそういう菌が存在するのか……真相は闇の中、でございます。治療は奏効して、患者さんはよくなったそうです。うーむ。

追記

S.pneumoniaeはC群に凝集がくることがあるそうです……しょぼん。