突然現れる嫌気性菌

突然現れる、なんて書いてみたものの、嫌気性菌が理由もなく現れることはたぶんマレなことだと思います。嫌気性菌感染症には必ず理由がある、と考えた方が、何と云うか、理に適っていると思います。

血液培養からBacteroidesが検出されたら、必ずお腹まわりのフォーカスを疑いますよね?血液培養から嫌気性菌が出てくるパターンはたいていコレで、原発巣不明のBacteroidesは比較的珍しいと思います。あとは……うーん、思いつかんなァ……局所の感染症で、膿胸だったらStreptococci+口腔内の嫌気性常在菌(+先行する誤嚥性肺炎)、脳膿瘍でもやっぱりStreptococci+口腔内の常在菌、かな。あとは壊死性筋膜炎なんかで出てくるガス壊疽菌。胆嚢炎のガス壊疽菌なんかもよく見ますね。日常的に見そうなのはこのパターンくらい……かな。

だいたい人体の閉鎖空間に膿瘍を作るのはStreptococciです。だから膿瘍の染色で連鎖球菌を見たら、かなりの確率でStreptococciだと云っても問題ないくらい。それに加えてFusoやBacteroidesなどの嫌気性菌を探してみるといっしょにいるところが見つかる。だいたいこのパターンだと思います。肝膿瘍や胆嚢炎は先に好気性菌が感染を起こして、そこから嫌気性菌が感染する。いきなり何の理由もなく、嫌気性菌が体の中で悪さを始めるというのは、あまりないことじゃないかと思います。じゃあ免疫が弱った患者さんは?という話になりますけど、よく観察しているとわかりますが、たとえ好中球減少がある患者さんであっても、嫌気性菌感染症をいきなり発症することは比較的マレなことです。腸管内からのトランスロケーションでグラム陰性桿菌感染症を起こすことはマレではありませんが、それでも好気性菌(大腸菌や緑膿菌)が最初に感染を起こします。感染するスピード(というか病原性?)の問題かもしれませんが、だからFebrile Neutropeniaで最初に考えるべき緑膿菌であって、嫌気性菌や真菌じゃないわけです。(真菌はとても重要な要素ですが、たぶん最初じゃないですよね)

というわけで、逆に理由もなく嫌気性菌が出現したら、これはもうお腹まわりを探しましょう、という結論にならないかな、と思うわけです。何かはわからないけれども、何か理由があると思います。