放置されたCDAD

検査データからのアプローチは、誤解をまねく最大の要因のような気がします。曰く、「この検査が陰性だから、○○は否定的です」というヤツですね。ついこの前も、「CDテストが陰性だったので、偽膜性腸炎は否定的だと思い(!)、抗生剤をチエナムに変更しました(!!)」と云われました。偽膜性腸炎は病理学的な診断名ですから内視鏡で覗かないと診断がつかないし(偽膜のない、いわゆる抗菌薬関連腸炎はごろごろある)、CDテストが陰性だからといってCDADが否定的という理由にもならない。入院患者の下痢はそうでないと確信が持てるまでCDADを考えておくのが鉄則です。患者さんは腹痛を訴えて、ぴーぴー下痢をしていて、便中には白血球が見えている。レントゲンでは腸炎像で、これはもう良性の下痢というよりは「腸炎」でしょう?入院患者だったら、CDADがいちばん疑わしいはずです。これは鉄則。

絶対おかしいと思ったので、後日また出てきた便培養の検体を勝手にCDテストにかけたら、その時点で陽性になりました。なんでCDを飛ばして便培養なんかするかなあ……感度特異度をムシして検査からアプローチすると、検査に嘘をつかれます。こういう傾向は、検査するのが大好きな若い先生に多いような気がします。そしてそういう研修医の指導医も、検査するのが大好きなんですね。……根が深いなあ。

別に便培養ぜったいダメなんていうつもりはありませんが、およそ臨床的な意味はほとんどないように思います。検査を出す先生に問いたい。「あなたはこの便培養の結果を見て、どうするつもりですか?」先の先生は、便培養の結果(腸管内常在菌のみ)とCDテストの結果(陰性)を見て、抗生剤をチエナムに変えたそうです。それで、そのチエナムでいったい何を叩くつもりなの……?

レントゲンの腸炎像だったので、感染性腸炎だと思って……という返答でしたが、「レントゲンの腸炎像を叩く」というのは意味がありません。もちろんこの場合のチエナム投与はCDADを悪化させるだけで、治るわけがない。こういうのはもはやセンスの問題ではありませんよね。知っているかどうかのレベルだと思います。よって指導医の責任だと思います。CDADをほったらかしというのは、本当に罪深い。

CDADは放置されるとかなり危ないところまでいっちゃう感染症です。患者さんは苦しいし、下痢はぴーぴーいいますので、早めに見つけてあげてください……