点滴の作り置き

正直、やっちゃいけないことです。亡くなられた方のご冥福を御祈りします。

元ネタはここ

三重県伊賀市の診療所「谷本整形」で点滴を受けた患者が相次いで体調を崩し、1人が死亡した問題で、谷本広道院長が11日午前11時前、同院の中庭で記者会見し、10日夜、三重県警や伊賀保健所の事情聴取を受けた30代の女性看護師1人が院長に対し、「院長の指示に反して、点滴を作り置きしていた」と話したことを明らかにした。この看護師は、三重県警の事情聴取に対しても、同様の話をしているという。

朝の時点では鎮痛薬とビタミンの点滴で16人くらいが体調を崩して病院に運ばれた、医療ミスか、みたいなニュースだったのですが、感染症をやってる人間なら、だいたい症状=(発熱、悪寒、嘔吐、腹痛、白血球低下)+全員点滴を受けた履歴ありで、「あ、感染症や」って感じでピンとくるもんです(最終診断が感染症かどうかはまだわかりませんが)。続報が知りたくて仕事中もしつこくニュースを追っていっていると、だんだん情報が出てくるようになりました。

まずは予想通りに、点滴は作り置きしていたこと。ここでさらに感染症である可能性が高まりました。同じ点滴をした患者が複数同一の症状で運ばれていること。ここでさらに感染症である可能性が高くなります。さらに点滴の内容。鎮痛剤+ビタミン剤で、濃度の間違いが起こる可能性は低いらしいこと。通常、副作用でこのような症状は出ないらしいこと。これでさらにさらに、可能性が高くなりました。ここまでいくと、もうほとんど点滴が原因の血流感染症だと判断してもよいのではないかと思われます。まあ、ちゃんと鑑別するものは鑑別しないといけませんが。

あとは、どんな菌が分離されるか、ですね。どの程度の分を作り置きしていたのか。そのあたりの情報は、あとから出てくるのでしょうか。どのようなタイムスケジュールで患者が発生していたのかよくわかりませんが、長いスパンで患者がぽつぽつ発生していたのであれば、よっぽど多くの分量を作り置きしていたのか、そもそも調剤に使う何らかの道具が汚染されていたのか、そこらへんのどれかでしょうか。どの程度の分量、作り置きしていたのか。ここがミソじゃないかと思います。モノが高カロリー輸液ではないので(ビタミン剤と鎮痛剤)、もしかしたらかなり長い間、作り置きがあったのかもしれません。出てくる菌は、水回りのグラム陰性桿菌であると予想。続報プリーズ。もちろん、製造段階での異物混入も忘れない。

なんにせよ、職員の教育の必要性が重要であることを痛感させられる事例だと思います。こういうことが起きると医の倫理観がどうのこうのと云われるんですが、じつは医の倫理観よりも前に、「モノを知らないだけ」ということが往々にしてありますので、こういった一見なんでもないことに思えるケースを取り上げて、どのような事態になり得るのか、しっかり教育する必要があるんでしょうね。普通、事態を悪くしてやろうとする医療従事者って、なかなかいないものですから……

追記

古館さん!グラム陰性菌じゃありません!グラム陰性菌です!