細菌の見えない膿尿

性的に活動性のある年齢の患者の場合、細菌の見えない膿尿は要注意です。もちろん細菌検査をやっている検査技師なら云わずもがななことですが、淋菌をカバーしないといけないからですね。主治医が淋菌狙いという情報をくれなくても、こちら側から推測し、淋菌をカバーしなければなりません。けっこうな数のドクターは、検査さえ出してしまえば、あとは検査室が魔法のように結果を出してくれると思っています。情報をくれなくても泣かない。

こんかいの患者さんは18歳男性です。そのほかいっさい情報なし(笑)!膿尿でグラム染色では細菌見えず、オーダにはひとこと、「STD?」の添え書きが……

ま、まあ、STDを疑っているということだけでも書いてくれればいい方なのかもしれませんが、気を取り直して尿を遠心します。で、チョコ寒で48時間培養です。うまくいけば、グラム染色で確認出来なくてもけっこう生えてくるものです。もちろん鏡検で確認できればかなり有用ですが、現実にはそうそううまく見えたりしないもの(?)。白血球に貪食された陰性双球菌が見えないからといって、淋菌がいないというわけではありません。おなじような状況でGNCを見つけて、じつはB.catarrhalisだったということもありましたし、やっぱり絶対というわけじゃないんですよねえ、教科書の記述って。

で、今回は相当がんばったんですが、淋菌は検出されませんでした。状況として、検査前確率はものすごく高いわけですから、淋菌みたいな培養されにくい菌に対しては、何回か手を替え品を替え、がんばってみる価値はあると思います。難しいところです。さいきん薬剤耐性淋菌が多く検出されていますので、出来るのであれば、がんばって感受性試験もしてあげたい。まあ、培養されてこなければ、どうしようもないんですけど……

というわけで、今回は「クラミジアPCR(+)」という、予想通りのオチがつきました。淋菌のPCRは(-)です。クラミジアだけの感染だったんですね。淋菌とクラミジアの共感染は有名な話しですが、クラミジアだけの感染というのも当然ありえるわけです。こうやって、検査前確率がやたら高そうな場合、どこで切るかを迷います。陰性!と断言出来るだけの根拠をそろえるのも、また難しかったりするものですね……