麻疹の感染対策

職員の抗体価の管理・把握は、院内の感染管理責任者の責務です。必ず、抗体価を測定し、適切に管理運用すべきです。ワクチン接種の有無を尋ねるだけですませている施設があるようですが、対策として不十分なことは、昨年の流行で証明済みだと考えます。昨年の麻疹流行では、10代20代の患者が全体の7割強を占めました。これにはいくつかの要因が関係しており、ワクチンを打っていない世代があること、ワクチンを打っていても一回接種のために抗体価が不十分なものが存在していること(自然感染する機会が少ないため、ブースタがかからない)、そもそもワクチンを打っても抗体価が上がらないものが存在していること、などが挙げられています。

つ、ま、り。

過去にワクチンを打ったことがある、という事実は、実は何の免罪符にもならない、というワケです。過去ワクチンを打ったことがあるにもかかわらず発症するグループがあり、それらは症状の軽い修飾麻疹と呼ばれました。昨年の流行理由を正確に把握していれば、過去にワクチンを打ったことがあるなどという記憶はまったく意味がないことがすぐに想像出来るはず。抗体価を測定し、把握しておくことが必須です。

また麻疹に罹患したことがある、という記憶も、まったく意味を為しません。これはすでに述べた免疫の減衰による修飾麻疹の発症などが理由にありますが、じつは麻疹と風疹を間違えていたとか、実は麻疹じゃなかったとか、記憶とは実に曖昧なものです。そんな曖昧なものに頼って職員配置をするのは、二次感染のもとになります。そして「自分は麻疹にかかったことがある。きょうはちょっと調子が悪いけど、交代要員もいないし、出勤しないと……」なんてことになり、めでたく病棟で集団発生、なんてことになりかねない。麻疹が発生したときにかかる経費を見越して、感染対策に経費をまわすべきだと考えます。

いや、自分が感染管理する側に回ったら、想像を絶するあまりのずさんさにびっくりしまして……ごにょごにょ