血培から酵母様真菌が出てきたよ?

前に書いた覚えがあるので二番煎じになってしまいますが、血液培養から酵母様真菌が出てきたときは、全例加療対象だと思ってください。表皮の最優勢菌である表皮ブドウ球菌を差し置いて、器用にCandidaだけがコンタミする確率というのは、かなり低いのではないかと思います。これは検査的な視点ですが、世の中にある症例の大半は、教科書通りの経過を辿るものです。

血培から酵母様真菌が出てきたら、感染源を死に物狂いで探してください。血管にカテーテルが刺さっていたら、それだけでカテーテルを容疑者にしてもいいくらいです。もちろんIVHカテーテルなどは患者の生命線になりますので極力抜きたくないのはわかりますが、抜かずにCandida血症を治療するのは難しいと思います。まあ別に全例抜去しろと云っているわけではなく、ちゃんとカテーテルを疑ってください、ということですね。疑った上でカテーテルを抜去できないと判断される分には合理的な理由がありますし理解出来るのですが、血培から酵母様真菌が出たときに電話で報告して、その第一声が「コンタミですか?」では、ちょいとレベルが低すぎると思います。

顆粒球減少のない患者で血培から酵母様真菌が出たときは、いちばん確率が高いのはカテーテル類だと思います。酵母様真菌(おおむねCandida属)はそれほど強烈な病原性を発揮しない菌ですので、逆にそれが血液培養から出てくるということは、皮膚などの防御が破られている箇所、つまり血管に留置されたカテーテルなどが感染源となる可能性が高くなるわけです。Candida属は多くの場合、肺炎を起こしませんので、菌の侵入門戸は非常に限られたものになります。腹部の手術後やHIV感染症、火傷の患者、ステロイド使用、糖尿病などの免疫不全要因が絡むわけで、その点では「とりあえず」検討がつけやすいものになっています。よって、私は「コンタミですか」と聞いてくる主治医には(おおむね研修医ですが)、いつも質問攻めにします。患者背景と免疫の状態、カテーテルがあるかどうか、場合によっては栄養状態、年齢によっては嚥下がうまく出来ているか、ときにはそういったことも聞いてみます。まあたいていの場合、カテーテルがあるかどうか聞くと、「あります」って答えが返ってきますが。

血培陽性例を安易にコンタミネーションとして片付けないでほしいなと思います。それと、酵母様真菌をナメないで欲しい。ごく最近見つけた症例では、その酵母様真菌はT.beigeliiでした。MCFG、無効です。AMPH-B、効きが悪いです。ちょっと珍しいなと思いましたが、カテーテルの採取をお願いしたところ、同一菌が検出されました。おおむね教科書的で、わかりやすい症例だと思います。