浦島太郎だなあ……

一週間ほど実家のほうに帰っておりましたが、まあいろんなことがあった一週間でしたね。別に私は朝八時に起きてメシ食わせてもらって、のんべんだらりと自堕落な生活しているだけでしたが、年金「テロ」が起きて、週末は(仕方なく)学会に参加するために東京に行っていたんですが、その東京に行っている間に犯人が捕まって、なんというか、まるっきり浦島太郎です。流れについていく気もあまりないんですが(笑)、なかなかお騒がせな一週間でした。

けっきょく年金テロは「テロ」ではなかった、という結論になりそうですね。ようするに、政治的背景がなかった、ということです。容疑者が出頭してきたと知ったのが日曜日の夜だったかな、ヒマだったので休憩がてらテレビを見ていたんですが、そこでやっていました。とりあえず逮捕されたらしいということを確認してそのときは寝ちまって、翌日に学会会場のフリースポットでネットにアクセスして細かい情報をゲット(笑)。ここらへんが私らしいというかなんというか……ネットで確認したほうが速いんだもの。動機の解明が急がれているようですが、容疑者は犬がどーたらこーたらと述べているようで、そのあたりで紛糾(?)している、というのが現状でしょうか。

30年以上も前の犬が直接的な動機となった可能性はないと思いますが、このエピソードが容疑者の人格形成に何らかの影響を与えたことは確かでしょう。住所は、どうやら昔の住所録を調べたようですね。さもありなん、さもありなん。探偵なんかが昔使った手らしいです。なぜ事務次官なのか……これは運が悪かっただけなのか(つまり、適当にエラそうな名前の事務次官という役職に狙いを定めただけなのか)、それとも明らかな意図があったのか……三人目の予定は元事務次官ではあったものの、年金とは関係のない方だったそうですね。可能性としては、この線で「年金テロ」という可能性は低くなったと考えられるでしょう。もちろん実は黒幕がいて、逮捕された容疑者はその鉄砲玉だった、という可能性は否定しないといけませんが。

動機について、報道からは「ワケが分からない」という困惑が読み取れました。適当なことを云って、精神異常者を装っているんじゃないか、という意見もあるようです。さあ、どうでしょうか。そうとも取れるし、そうでないかもしれません。保険金詐欺だとか、怨恨による殺人だとか、「殺人を犯すに足る動機」が供述として出てこないので、警察関係者も、厚労省も、世間様も、みんな戸惑っているように思えます。常識的に考えれば、「30年以上も前に犬を保健所に殺された」なんてことが、事務次官を殺してのける動機になるとは思えません。それで戸惑っているんでしょう。いずれ精神鑑定にもなるかもしれないし、犯罪心理学者みたいなものが出てきてあーでもないこーでもないとスジの通りそうな推測を並べるんだと思いますが、もしかしたら、スジの通る理由なんて出てこないかもしれませんね。スジが通る理由が見つからないと社会が不安になるのでこじつけでも納得出来そうな理由を見つけ出すとは思いますが、耳あたりのいいことばで十把一絡げにしてカテゴライズしてしまうのだけは止めたほうがいいと思いますね。いわく、「キレる」とか、「心の闇」だとか。

こんなことばで分かったような気になるのは止めたほうがいいと思います。「現代の心の闇」だとか、笑ってしまいますよね。こういうことばは分かったような気になるだけで、その実何もわかっていない。ひとは隣人がいきなり豹変するかもしれないという事実に耐えられないからこそ、その豹変するひとたちにラベルを付けて、「キレる子供」だとか、カテゴライズしてしまう。なぜ豹変するのか、そこが重要なのに、現代の子供は「キレる」から、なんて云って片付けてしまう。理解出来ないものをブラックボックスに押し込めて、「臭いものに蓋」が現代社会の特徴かな、とか思ったりもします。さあ、この事件はどうなるんでしょうか。

個人的には、カミュの「異邦人」を思い起こしますけどね、この供述内容って。直接関係はありませんけど。