微笑ましい研修医

ものすごく典型的なS.pneumoniae肺炎を見ました。救急から至急で抗酸菌を見てほしいと云われた患者だったのですが、こういった患者さんはたいていの場合は細菌性の肺炎で、抗酸菌が見えることはほとんどありません(もちろんTBは絶対に否定しておかなければならない鑑別疾患のひとつです)。よってグラム染色のスライドも作って鏡検したのですが、笑いたくなるくらい典型的なS.pneumoniaeでした。救急センタの主治医には、自信をもって断言しました。こんど症例として写真を載せようっと。

で、次の日に入院先の主治医(救急とは別の主治医)に経過を報告したのですがねー。これが2年目の研修医でしてねー。抗菌薬を入れた後の喀痰、具体的には使った薬剤はABPC/SBTだったんですが、そいつを使った後の喀痰で、綺麗にS.pneumoniaeが消えていたわけです。喀痰の品質としても文句なかったので、その旨をちゃんと報告しました。土日は基本的に経過観察がメインになりますので、使っている薬剤の効果判定は非常に重要です。

ところがその研修医、「まだ二日目だしね」と鼻で笑ってくれまして、なかなかに微笑ましい研修医でした。まだ二日目で、検査結果でも、CRPは上がっているし、WBCもまだ下がってきていない、効果なんかわかるわけないだろ、という口調。まあコメディカルに何がわかる、とでも云いたいのでしょう。なぜか救急センタと外科を巡り終わった研修医に一時的にこういった症状が見られることが多いんですが(一時的にとても横柄になるんですね)、たいていの場合はどこかの看護婦さんにへこまされて元に戻ります(笑)。やっぱり外科とかを巡ると、「俺が治療している!」という実感があるんでしょう。そういった実感は充実感を伴うものなのでいいことだと思うのですが、横柄になるのは困ったもんだと思います。

でもまあ、感染症の基本中の基本も知らないのに研修医と名乗れるわけですから、日本は実に平和な国だなあと思います。微笑ましいじゃありませんか?(まあそう云いながらも、内心はとても腹立たしいわけですが……)