マスクに意味はあるのか

10年前にも同じ記事を書いた。世間様はまったく変わっておらず、相変わらず微笑ましい。
kisaragi5.hateblo.jp

マスクは拡散させないために着用するものだ。まずここを認識してほしい。マスクをしないとたちどころに感染して死ぬわけではない。マスクをしていたら感染しないわけでもない。したがって、感染者が周辺にほとんどいない状態でマスクをヒステリックに着用する必要はない。だが、感染者が増えてきたらマスクは拡散防止に有効だ。あくまでも拡散の防止に対して有効なのだ。

マスクに感染防止効果があるかどうかについては、昔から議論されてきた。いちおうもっともらしい回答もあって、「適切に扱えば効果があるかもしれない」。誰も科学的に確からしい検証できていないので、これ以上、議論のしようもない。理屈の上では、

  1. マスクの前面を触らない
  2. マスクは適切な頻度で使い捨てにする(適切の定義は不明)
  3. 廃棄するときには、紐をつまんで廃棄し、廃棄後、アルコールで手指を消毒する

など、注意が必要で、適切に扱えば、感染を防御できる可能性がある。

これは、マスクがウィルスを止めている(=感染防御能がある)という前提の、理屈の上での話だ。この仮定に従えば、止められたウィルスはマスクの前面に付着しているため、そこに触れてはならない。触れると、ウィルスが手指に付着し、回り回っていずれは口の中に入るだろう。そこですべてが無駄になる。大半の人はマスクを「適切に」扱えないため、結果的にマスクは飛沫感染のウィルス感染を防げないことが多い。少なくとも、電車で吊革をにぎったその手でガムを取り出して食べているひとには、(結果的に)マスクは効果がない。

マスクをしていたら安心なわけではない。その結果、感染が防御できるかどうかが大事なのだ。マスクは目的ではなく、ただの道具であることを認識してほしい。

2019-nCoVは飛沫感染だと云われている。エアロゾル感染という表記をみたが、云っていることは飛沫感染なので、すべて置き換えて構わない。エアロゾル感染が空気感染だという話も目にしたが、まったく異なるし、この文脈は間違いだ。デマだと云ってもいいし、これを拡散したまとめサイトの行為は、世間に不安を拡散したという観点から、「マスコミュニケーション・テロ」だと云ってもいい。基本再生産数をみても、現状インフルよりやや高い程度なので、おそらく飛沫感染であたりだろう。空気感染だとR0が10超えてくるので、統計的にも飛沫感染だという判断は妥当性が高い。そうであるなら、対策はインフルエンザに準じて対応する。ウィルスが変異して空気感染するかもしれない可能性が心配なら、もちろん一般人がN95マスクをしても構わない。理解した上で選択するなら、それは自由だ。だが、パニックになっているだけなら、まずはいちど深呼吸して、明日も生きている自分を強くイメージすることをオススメする。

手をしっかり洗う、首から上を触らない、これがもっとも有効性の高い自衛策である。ここから派生して、手づかみでものを食べないことを意識する。エレベータのボタンを利き手で触らない。スマホを触った手は汚いと意識する。無機物に付着した2019-nCoVがどの程度活性を保つかは知らないのでなんとも云えないが、知見が得られるまでは、インフルエンザ相当には活性を保つと考えておくべきだろう。つまり、一般人がやることは、インフル対策となんら変わるところはない。

死亡率が高い、という話もあったが、すでに散々解説されている通り、ただの数字のマジックから生じた誤謬である。疫学の実態は、ほぼインフルと変わらない。基礎疾患をもつ患者が死にやすいのも、インフルエンザと変わらない。

マスクが売り切れて、品薄になってしまう理由が本当にわからない。10年前にも同じ状況になった。あのときもヒステリックに不安が拡散された。N95マスクをしている一般人まで出る始末だった。電車にはN95マスクの下にガーゼを挟んでいるひとをみて、(本当に)絶望的な気分になった。

また10年後も、同じように、似たようなシチュエーションで、似たように騒いでいるのだろうか。