室戸岬と「夜明」 〜 BRM102 高松400 〜

室戸岬にたどり着いたのは、想定18km/hの7:00くらいだった。本来であれば、この時刻にPC2にたどり着いているはずだったのだが。

ヤケクソ気味な決意とともに日和佐の道の駅を旅立ったものの、風もそれほど強くなく、脚もそれなりに回るようになってきていた。以前ここを走ったときには鹿の死体に蹴つまずきかけたが、こんかい日和佐の道の駅から室戸岬までは特段なにも起こらず、淡々と一定のペースで脚を回し続けた。まあ、野生のハイエナみたいな動物が私の前に躍り出てきたり、マイクロスリープで一回すっころびかけたり、往復路なので先頭とすれ違ってあまりの速度差に絶望的な気分になったりしたくらい、だ。

夜が明けてきた。海の向こうがぼんやり白んできているのがわかる。とても長い、ある意味悲壮な夜を走り抜けて、わりと感動的……なシーンなのかもしれないが、眠いのと極度の疲労とで、わりともうどーでもいいや、という感じだった。せっかくの感動シーンが台無しである。ただ、暗闇から開放されるのは、とてもありがたかった。重たいヘッドライトを外せるし、なにより気分がぜんぜん違う。少しでも暖かくなれば、それも助かる。

室戸岬では通過チェックのための写真を撮らないといけないのだが、被写体の「風見くじら」がどこにあるのかわからない。サイコンの数字はキューシートと微妙にずれており、細かい部分はかなり不正確になってしまっていた。だいたい1.8kmのずれだ。不安になりながら探していると、主催者である今野氏がいるのが遠目に見えた。ああ、あそこなのかと近寄ってみると、風見くじらはすぐにわかった。ああ、これがそうか。

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(風見くじら。夜撮影には滅法弱いiPod touch画質orz)

さっそく写真を撮って、チェックしてもらう。今野氏に「はじめてのオーバーナイトなんですよ」という話をしたら、「なんで最初に高松選んだの」と呆れられた。うん、まあ、条件に合致する400ってここしかなかったんですよ、ほんと。俺自身、かなり後悔してる。

あまり時間もない。足切り君は、無慈悲な笑顔で笑いながら、着実に15km/hで迫ってきている。たまたまそこで時間のかみ合ったランドヌールと、そのままPC2に向けて走り始める。このあたりの道はわかるので、不安はまったくない。難なくPC2にたどりつく。

そこでレシートをもらって、装備を少し整理した。
まず、夜が明けてサイコンの数字が難なく確認できるようになったため、ヘッドライトをヘルメットから外した。これが、首が痛い原因のひとつだと思われたためだ。眼鏡をサングラスに切り替える。フェイスマスクも外そうかと思ったが、これはそのままにしておいた。外してもよかったが、まだ(常識的には)少し寒いと感じられたからだ。マスクをしていると呼吸がしにくいので出来れば外してしまいたいのだが、首に巻いておくだけでも暖かいのでそのままにしておくことにした。眼鏡を外したことで視界がやや悪くなるが、辺りが明るいのであれば、サングラスの方がいろいろ便利だ。

ここからのコースはものすごく単純だ。PC2から少しだけ登って、そのまま下って、あとはえんえん(牟岐まで)来た道を帰る。それだけの、単純なコース。夜が明けて、コースが明るいと、いままで走ってきた道がぜんぜん違うもののように思えた。直射が当たると、ほのかに暖かい。辺りが明るいのと、肌に感じる太陽の暖かさ。それだけで、意外にまだ走れそうな気がしてきているのに驚く。

中身はもうボロボロで、ひとりで走っていたのなら、そのまま止めていただろう。不思議なものだが、あと200kmも残してすでにボロボロだったのに、でも、まだ、走れそうだった。

貯金はまだある。足切り君にはぜったいに負けない。

「行くぞ(゚Д゚#)ゴルァ!」

気合い一発、景気付けに叫んで往路を始めた。
(後ろに誰もいないことを確認してほんとに叫んだ)