CVカテ挿入時の最大無菌操作法は感染リスクを減らさない?

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CVカテ挿入時のマキシマムバリアプリコーションは結構云われて久しいと思うのですが、個人的には懐疑的でした。自分のいままでの体験から、どうも「カテーテル感染の大半は、一過性の菌血症から生じているのではないか」と思えてならなかったからです。カテーテルから菌が出てきたらそりゃまあ感染だろうとは思うのですが、ちょっと考えてみるとわかる通り、皮膚に突き刺さっているカテーテルは、そもそも無菌ではありません。カテーテルの刺入部が赤くなって腫れて膿が出ていたらほぼ間違いなく感染だろうとは思いますが、私がよく主治医から相談される症例の大半でそのような感染兆候が見られないのです。

こりゃいったいどういうことだろうとは思っていたのですが、カテーテルによく取り付くカンジダのことを考えてみると、やっぱり腸管内からトランスロケーションで血中に飛んだC.parapsilosisが高濃度のブドウ糖があるカテーテルに取り付いて感染が成立する内因性感染のほうが、すっきりと理解できます。C.parapsilosisは高濃度のブドウ糖存在下で増殖スピードが上がるという特技を持っていますので、カテーテル感染にびみょーにC.parapsilosisが多いのもうなづけます。高濃度のブドウ糖が存在するのはカテーテルの中であって、外ではありません。

従って、カテ挿入時のマキシマムバリアプリコーションは、このケースに対して論理的に意味がほとんどないと考えられるわけです。私が以前からマキシマムバリアプリコーションに懐疑的な理由はここにあります。刺入部をイソジンでせっせと消毒する人がいますが、これも患者に苦痛を与えるだけで無意味ではないかと推察されます。まあ、今回紹介されていた論文の全文を読んでいないのと、どうもn数が少ないようなので最終的な結論はわかりませんが……MBPで感染が減るよと主張している論文もあり、ほんとのところはまだわかりません。より大規模な研究でもって、結論を出すべきでしょう。

(マキシマムバリアプリコーションの考え方は、敵(菌)は外からやってくるである。私はこれは、必ずしも正しいとは思わない。カテーテルが挿入されている→たまたま菌血症が起きた→たまたまカテーテルにその菌がへばりついた→カテーテル感染が成立した、というケースのほうが多いように思う。MBPはCDCが推奨している方法だが、アメリカらしい考え方である)