ABKは使えるか?

さいきんよくMRSAに対してABKを使っているのを見るようになりました。理由を聞くと、「腎機能が悪いから」=「VCMを使いたくない」という返事。すごいな、そういう考え方も出来るんだと妙に感心したのですが、ABKはアミノグリコシド、ABKを使っても腎機能は悪くなりますよ?

アミノグリコシドの腎機能障害はたしか投与総量に依存していたはずで、それゆえいかに腎機能が悪くても投与初期にいきなり腎機能が悪化するということないはずです。短期決戦で叩くなら、それもいいのかもしれませんが、もともと長期投与が覚悟の上であるMRSA感染症に対して、「腎機能が悪いから」という理由はどーにも納得がいきません。それを聞いたときには、頭にはてながいっぱいになりました。いっぱいになりすぎて即座に反論出来ずじまいで、「はあ、そーですか……」みたいな何とも云えない返事になってしまったのですが、そもそもMRSAに対してABKって使えるんでしょうか?いや、別にまったく使えないというつもりはなくってですね、MRSAに対してABKを投与して、治ったところを見たことがないんですよねえ……

ABK=抗MRSA薬!という図式が先行していていまいちそれも納得出来ないんですが、そもそもその「MRSAに効くよ」という場合の投与設計はどうなんでしょう?さいきんABKの一回投与が認められるようになりましたが、MRSAに対して分割投与で検討したのか、一回投与で検討したのか、それもよくわかりません。というか、そーゆースタディそのものが見つからないんですよね……理論的には、一回投与の方が薬効は高いはずなんですが、当院では分割投与されておりまして、そのせいで効いてないのかなとも。

というわけで、個人的な趣味として、ABKはあまり好きじゃないです。理由は上記のふたつ、そもそもABKですっきり軽快した例をあまり見ない、スタディを読んだことがない(=存在しない、というわけじゃないので、あればぜひ読みたい)。正体のよくわからない薬剤は例外なく嫌いです(笑)