阿蘇路 [ 復路final その3 ]

個人的にはレースに興味はない。もっぱらロングライドばかりしている。でも、自分が「どの程度は知れるのか」には興味がある。ブルベに出走する動機には、そんなところもある。つまるところ、力試しだ。

豊後大野の前で、外人さん2人組に出会った。数キロ手前の公園にロードが二組いるな、とは思っていたが、外国人旅行者とは思っていなかった。地図と時間を確認していたところに、話しかけられた。

「excuse, me...」

おおう?明らかに挙動不審(私が)。私、エイゴシャベレマセーン。ついでに云うと、キキトレマセーン。不意打ちだったので、もうまったく何を云っているのかわからない。外人さんの年齢ってよくわからないが、若くも見える。白人の旅行者で、装備を見る限り、どうやら九州縦断といったところだろうか。・・・でもこのあたりって、国際空港ないよ、たしか。どうなんだろ。

私:「sorry, I cannot speak English...」
外人さん:「Oh...OK. 私、日本語すこしできます」

あれ、意外にお上手。まあ、旅行先の言語を学ばない、ってありえないか(安全上の問題で)。

外人さん:「大きな町、ありますか?」
私:「大きな町?うーん、ここら辺の町はどれも小さいですよ?」
外人さん:「ブンゴオオノ?」
私:「ブンゴ?えっと、ちょっとわからないけど、たしか通り過ぎてなかったっけ?」

「ブンゴオオノ?」といって来た方向を指差すと、外人さんは「Oh...」といって頭に手を当てた。ただ、この辺りは「豊後なんとか」って地名が非常に多い。すでに私は猪突猛進モードで、おおまかな地名はすべて暗記しているが、豊後なんとかの出てくる順番まで覚えてはいない。おまけに少し気が焦っていて、地図を取り出し、「here」といって見せてみた。iPhoneなので、むこうも操作はわかるらしい。

ざっくり地図で探してみても、豊後大野を見つけられなかった。うーん、どうしたらいいだろう?

検索してみたらよかったのだが、なぜかそのときは思いつかなかった。「sorry..., I am traveller too」というと、向こうは私のフロントサイドバックを見て納得したように、「九州、住んでない」と云った。意図は伝わったようだ。私「も」地理に明るくない。

私:「Yes,yes .... 大きい町、大分?」
外人さん:「オオイタ?オオイタ、難しい」

外人さんが驚いたように返してくる。「ミエ、大きい町?」と聞かれたが、「うーん、sorry、わからない、です」としか返せなかった。

やや情けないが、もうこれ以上できることはない。
その大分に行きたいんだ、と云いたかったが、適切な英語が浮かばなかった。仕方がないので、申し訳なさそうに頭を下げる。外人さんもにっこり笑って「Thank you」といってくれた。ジェスチャで返して、そのまま自転車で漕ぎ出した。

私としては、衝撃だった。外人さんに出会ったことが、ではない。なぜって、「大分、難しい」と云っているひとたちに、地図を確認するために止まっていたとはいえ、追いつかれたのだから

衝撃である。計算上、リミットはあと2時間弱。少し余裕ができたとはいえ、相変わらず20km/hで走らなければならない。ああ、さすがにこれはまずいなあ。

ちなみに、ミエは三重町であり、このすぐお隣で、宿泊できる施設があるくらいには大きな町であった。豊後大野は、このあたりの地名である(と思う)。外人さんには悪いことをしたなあ。

「I have reserved ferry ticket at 6:00pm...in Oita」
「have a nice trip」

と云えば、よかったのかなぁ?