九州ワンデイツーリング(別名修行ツーリング)1

九州の山の中を走ってきた。残念ながら、諸事情によりかなりの意気消沈状態だったので、ほとんど写真を撮っていない。

ことの発端は、長距離を走りたい、という、純粋な欲求だった。もっと正確に云えば、「旅がしたい」である。元来私にはこの「旅がしたい」という欲求が強くあるらしく、おいしいものを食べたいとか、観光したいとか、ずっとそういうことは二の次だった。とにかく長距離を走って、ついでに観光が出来ればよいと思っていた。そのため、出来るだけムリのない範囲で、長距離が走れるようにプランを組んだ。

阿蘇山を登り、高千穂を経由して、宮崎に抜ける。そんなルートだ。

困ったことに、ずっと仕事が忙しかった。……ほとんど事前準備ができないくらいには。さらに他所に任せた仕事に超級のミスが見つかって以降、修正に追われてろくに自転車のメンテナンスも出来なかった。自転車はおよそ一ヶ月ばかり、ほったらかしだった(途中でスプロケの交換とかはしたのだが)。

一日○○時間超の労働で何とか仕事を片付け、ぎりぎりのラインで荷造りを進める。オルトリーブのフロントサイドバッグ二個に、チャック付き袋で区分けした着替えとガジェット類、衛生用品を詰め込んでいく。重量を量ってみると、片方でだいだい3〜4kgあった。つまり、両方で8kg弱だ。iPadとカメラ、非常用の輪行袋が重たいのはわかっていたが、いずれも理由があって入れているため、抜くことは出来ない。それに付随して、充電器、ネットワーク接続用のモバイルルータなどが、さらに重量を増す要因となる。天気があやしいとなれば、レインジャケットも含めなければならない。

重さにげんなりした。これで、この炎天下のさなか、阿蘇山を登るというのか?

もともと1時から2時、3時くらいまでは走る気がなかった。クーラーが効いてなくてもいいのだ、どこかそこらへんの休憩場所を見つけて、昼寝するくらいのつもりだった。それで10時間で100km弱だ。山ツーリングと云えども、それほど無茶な計画ではなかったはず。

ぎりぎりに仕事を終えて、フェリー乗り場に駆けつける。近くの駐車場に車を止めて、さっさと自転車を取り出し、組み立てる。今回の主役、フロントキャリアを取り出し、てきぱきと取り付けていく……はずだった。

「あれ、キャリアのネジがなくね?」

一気にパニクった。いっしょのところに入れておいたはずのネジがない。ネジがなければフロントキャリアを取り付けられない。フロントキャリアがなければ、8kgになんなんとする荷物を運ぶ手段がない・・・!

どこを探しても見つからない。ちなみにこのネジは、帰宅したいまもって行方不明である。マジで困るんだけど、見つからないので困っている。オーナがパニクっているので、さっさと出てきなさい。

パニクった私は関係のなさそうなところも含めて車中のありとあらゆるところを探し、結論として、絶望とともにネジはここにはないと判断せざるを得なかった。いくつかの代替案が浮かぶ。

  1. 諦める
    • ツーリングそのものをきれいさっぱり諦める。潔いが、あまりにもアレである。
  2. 自転車を置いて徒歩旅に切り替える
    • これはこれで魅力的だが、残念なことに駐車場からフェリー乗り場まで距離がありすぎて徒歩ではタイムアウト確実である。予約は自転車でしているため、変更もできない(たぶん)ため、車旅に切り替えることも難しかろう。
  3. 荷物を抱えて根性で走る
    • できるわけない。却下。
  4. 一日短縮し、現地でリュックを購入、荷物を移し替えて走る。移さなかった荷物はフェリー乗り場のロッカーへ。
    • わりと現実的な案だが、そのとき想定していた荷物量がわりと大きかったため、このときは却下した。現地到着が早めの時間であり、店があくまでにかなり時間ロスが生じるであろうことも、却下の要因となった。いま考えてみると、この案はかなりイケていたのではないかと思う。冬なら、たぶん実行しただろう。
  5. ワンデイツーリングに切り替える。
    • 宿をキャンセルし、ワンデイツーリングとする。荷物はすべてロッカーへ放り込み、復路も同じフェリー乗り場を使用するぐるっと型サイクリングである。

少し考えて、ワンデイツーリングに決めた。荷物をバラし、一日分に作り替えてサイドバッグに放り込むと、サイドバッグを背中に背負って走り出す。背中でまったく安定しないが、シッティングで上半身を締めてぶれないように漕げば、充分に走れるレベルだ。長時間は無理だが、問題ない。

というわけで、出航のぎりぎり10分前にすべりこむという、非常に迷惑なことをやらかして、なんとか滑り込む。前途多難であることは、ここからも容易に伺えた。