壁ドンって威嚇行動じゃね?

現実にこれをされてうれしいシチュエーションって考えにくい。

これを最初に世に問うた作品があるのだろうが(漫画だったっけ)、作者はまず女性であろうと思われる。要するに、愛情の表現であり、「お前が」必要なんだ、という表明であり、根本的には、BL(Boy's love)的な表現の亜種であると思われる。まあ、現実にされたらドン引きだけど、頭の中では理想的、というところも、BLと壁ドンは似ていると云ってもよい。

BLの根本は、「俺はお前を必要としている」という一点につきる。たとえそれが「反社会的」であろうと、俺は「お前だから」お前を必要としている、というところにBLの本質がある(正直エロ要素はその結果でしかない)。だから、昔から必要とされることで女性性を規定されてきた、昔ながらの考え方に親和性が高い。意識的にせよ無意識的にせよ、BL的要素を求めている女性は、おそらく厳しくしつけられ、その考え方が無意識的に生き方に染み付いているひとが多いのではないかと思われる(当然画一的にそうであるはずはないが)。

「何にも考えずに、おまえは俺についてこい」と云われて、うれしい女性がいるのだろうか?ようするにお前は思考せずに、俺のものなんだから、黙って俺に従っていればいいんだ、おまえの考えなんか知らねえよ、という表明である。これは昔から男性が女性に強要してきた昔ながらの女性像であり、男性に都合の良い幻想である。従って、壁ドンされてうれしいという感情は、昔ながらのレールに収まっているのが安全で楽だ、という感情(というか現実)に起因しているといってよい。これは馴染みのある考え方に安心感や安定を感じるという、心理学的な傾向による。

保守的な、と表現するのは少し違うと思うが、基本的には、「壁ドン」は、そのような心理的傾向によって成立している、きわめて特殊な幻想である。明らかに男性に都合が良い幻想なところが不思議だなあ、と思う。