選択肢を減らす工夫

どうでもいい選択肢が多く存在すると、確実に疲労していく。元気な人はたいてい気がつかないが、疲れていると、選択肢に遭遇するたびにじわじわと疲労していくのがよくわかる。

私だけおかしいのだろうかと思っていたが、これはどうやら「決断疲れ」という症状のようだ。ビジネスマンには比較的よく見られる現象らしい。お金を動かす役職の人は、決断疲れを起こしやすいのではないかと想像する。自分の決断に責任をもつのはどこの業界でも同じだろうが、その決断から受けるプレッシャーは、個人によっておのおの異なるだろう。

巨額の資金を右から左に動かすような仕事をしていても、とくに何とも感じない人もいるだろうし、部屋のレイアウトを決めるだけで疲労してしまうひともいるだろう。私はどちらかというと、優柔不断なほうだ。いろんな選択肢があると、ひとつに決めるのが苦手である。

最近気がついたのだが、私はどうやら「選択肢を探してしまう」傾向にあるらしい。たくさんの選択肢を吟味し、そのなかから最良のものを探そうとする。判断するためには、判断のための根拠が必要になるが、選択肢が多ければ多いほど、判断に必要な情報も増えていく。おそらくこの傾向は「完璧主義者」と呼ばれるひとたちに見られるのではないかと想像するが、選択肢が多ければ多いほど、また選択する幅が広ければ広いほど、起きる影響が大きければ大きいほど、疲労もまた大きくなっていく。

選択肢は減らさなければならない。決断疲れを遠ざけるもっとも重要なことは、決断することを減らすことだ。そして重要な選択肢に注力する工夫が必要である。決断することに疲れてしまうと、なかなか元には戻らない。余計にパフォーマンスが落ち、判断が狂っていくので、疲れるまでになんとか防止する努力が求められるだろう。

お気づきの通り、つまるところ、この症状は「鬱」なのであって、鬱にならないための予防策、と言い換えてもよいかもしれない。