絶景(絶叫)の南阿波サンライン 〜 BRM102 高松400 〜

威勢良く叫んで往路を始めたものの、異常に眠たい。夜中に走っているときにもマイクロスリープですっころびかけたが、辺りが明るくなってからの方が眠気が強い。これはちょっと無理だと思って、途中で適当に眠ることにした。当たりを付けていた場所には先客がいたので、その近くで適当に座り込む。たぶん15分くらい、適当に仮眠する。

仮眠できるくらいには暖かい。風がほとんどないのが救いだった。

目が覚めると、かなりすっきりした。先客はまだ寝ている。ぴくりとも動かないのでやや不安になったが、とりあえずおせっかいせずに放置することにした。じつはこの先、何人ものランドヌールが轟沈していたのだが、さすがにみんな慣れているのか、器用に目立たないように眠っていた(豪快に眠っているひともいた)。眠たさと疲労が極限に達すると、自分の意志とは関係なしに瞬間的に眠りに落ちるのを繰り返すようになるが、15分でもがっつり眠ると、その後がかなり違うので、うつらうつらしているよりは、さっさと眠ってしまった方がよい。睡眠時間さえ確保できないのであれば、それはおそらくリタイヤすべき状況だ。

ふとウサギとカメの逸話を思い出すが、ウサギもきっと、さぼっていたのではなく、眠たかったのだろう。そのまま走っていたら、怪我をすると判断したのかもしれないぞ?

とりあえずの目標を牟岐コンビニ260km地点と定めた私は、ゆるゆるとまた走り始めた。宍喰の道の駅でいちど止まってトイレに行き、少しでも疲労がたまってきたなと思えば、こまめに止まって休憩を繰り返す。前半で消耗した体力が、ここに来て大きく影響しているようだった。体の痛みはまだ我慢できるレベルだし、それほど致命的な箇所は痛んでいない。脚はまだ回せそう。牟岐駅のところで右折し、南阿波サンラインに入れば、そこからはまたアップダウンが続く後半の山場になる。

南阿波サンラインは風光明媚な絶景ポイントだ。この近くに来たならば、ぜひ訪れるべきである。少し遠回りにはなるが、土佐浜街道を通るくらいなら南阿波サンラインを通った方が絶対にいいし、天気がよければ山の中を走っていては拝めない絶景が堪能できる。絶対的にお勧めである。

ただし、260km走った後での自転車でなければ。

絶景ポイントのご多分に漏れず、この南阿波サンラインは非常にアップダウンの多い難所となっている。否、じつは難所というほど難所ではないのだが、260km走ってカラッケツになったあとでのこのアップダウンはさすがに厳しいものがあった。今回、全行程をほぼフロントインナーギアで走っているが、すぐさまインナーローに入れて、くるくる回しながらえっちらおっちら登っていく。

じつは、この頃にはすでに右膝に少し違和感があった。というか、有り体に云って、かすかな痛みが自覚できるようになっていた。膝が痛むというのは、初めての経験である。よくわからないのだが、これは実にマズいのではないだろうかと思いながら、それでもここまで来ていまさらやめることも出来ずに、意を決して進んでいく。

半分を超えてしまうと、もったいなくてやめられないのである。いまでも初心者だが、まっこと初心者丸出しの思考パターンであった。

ただ、こんなときに入れててよかったと思うのが、リア30Tというデカスプロケの存在だ。ぎりぎりの状況でもかろうじてまわせることを目的に導入したのだが、入れておいて正解だった。そもそも比較的クライマ寄りの脚をしている私にとって、平坦で11Tとか使う機会ないのである。だったら、より大きなギアを入れておいた方がよっぽど役に立つ。まあ30Tは少々やりすぎかと思ったが、少なくともブルベにおいては正解だった。

くるくるどんどんくるくるどんどん。

脚を回すにつれて景色がどんどん下になっていく感覚は、きっと自転車でしか味わえない素敵な感覚だ。