九州ワンデイツーリング(別名修行ツーリング)4

さて、標高500m付近で力尽きた私は、諭吉を犠牲にしてやってきたこの土地でどこにも到達できずに帰るのはもったいないと考えた。……やめておけばよいものを。

山の麓まで一気に下った私は、できれば湯布院にくらいは到達できないかと考え、湯布院に向かってゆっくりと走り始めた。もうすでに一回湯布院にはポケロケを使って訪れており、新鮮味はほとんどないのだが、道がわかる安心感があったのがよかったのである。しかし、なんとなく無謀なチャレンジのような気はしていた。

途中で気温が容赦なく上がる。手持ちの気温計は30℃を超えている。風が吹けばそれほど熱くはないのだが、湿度と相まって、身体的なダメージは思っていたよりも大きかった。これは走ること自体がもうムリなのかもしれない……そう思い始めたのが14:00を回った頃だった。たぶん、正解だった。

100円の水が買える自販機を見つけて一息ついた私は、少し早いがこのままフェリー乗り場に帰ることにした。フェリーの乗船時間にはかなり早いし、時間潰すことも出来ないが、もうとりあえず帰った方がよい。気力も減退して、少し投げやりにそう判断した私は、そのままゆっくりと、登ってきた道を下り始めた。下りなのにスピードは上がらない。やはり自転車の調子もおかしいのかもしれないなとは思ったが、ここでは確認するすべもない。

私が熱中症になるかもしれないと思ったのは、もちろんその気温の高さと日差しの強さのせいなのだが(熱中症になる予兆というものは、一般的にはあまりないとされる)、ひとつに途中で数回、寒気を感じたというのがある。体温調節の加減だろうか、この寒気を感じるとすぐに無理が利かなくなることを経験的に知っているので、これは危ないなと判断した。時速15km/hくらいでへろへろになりながらコンビニに駆け込んで、ガリガリ君のソーダ味を購入、日陰に入ってすぐに脇の下に当て、動脈を冷却する。30歳を過ぎたおっさんが、コンビニの木陰で座り込んで体を冷却している様は見れたものではないが、身の安全には替えられない。冷却部位は脇の下、股間にある動脈が比較的大きく、表に近いのでよいと思われる。首でもいいかもしれない。とにかく動脈を冷やすとよい。

しばらくへたり込んでいると気持ちが落ち着いてきた。同時に、何も成果がなかったこんかいのツーリングのことも頭をよぎったが、あまり深く考えないことにする。前回来たときは湯布院だったが、あのときは予定通りに事を運び、ほぼ問題なく全行程を終えて帰ることが出来た。今回は散々だったと、自然と口がへの字に曲がった。

フェリー乗り場には、乗船開始時間の3時間前についた。フェリー乗り場はとても涼しかった。