Notes from the Field: Emergence of New Norovirus Strain GII.4 Sydney — United States, 2012

今年のノロウィルスについての解説が、MMWRに出ています。知っていても臨床的なインパクトはありませんが、感染症loverにとっては面白い内容です。

Notes from the Field: Emergence of New Norovirus Strain GII.4 Sydney — United States, 2012

私たちが一般的にノロウィルスと呼んでいるものは、正確には5属あるカリシウィルス科のウィルスのひとつ、Norovirus属に属するNorwalk Virusのことを指しています。Norwalk Virusにも5つのグループがあり、それぞれG1〜G5にわけられ、さらに少なくとも34の亜種が存在するとされています。症状はきわめて悪辣で、死亡することこそ稀ですが、激しい下痢、嘔吐、発熱等を伴い、患者のQOLを著しく損ねます。感染性も強く、かつてはその特徴的な症状から、「お腹の風邪」などと呼ばれてきました。もっとも、「お腹の風邪」のすべてがNorovirusによる感染症だったのかは定かではありません(冬季の下痢症は多くある)。

人に感染し、もっとも多くの集団感染に関与しているとされるのが、G2-4に分類されるタイプです。この「流行株」は一定のスパンで入れ替わっており、かつて大流行した株はニューオーリンズ株と呼ばれていましたが、今季の流行株はオーストラリアのシドニーで発見されたため、シドニー株と呼ばれています。G2-4 Sydneyは2012年3月に発見されましたが、米国では、その半年後の9月にはすでにNorovirus集団発生の20%程度を占めるようになっていました。さらに同年12月には全体の半数強を占めるにまで至っており、Norovirusの伝播力の強さが伺えます。

MMWRの報告によれば、全体の約半数がヒトヒト感染であり、食べ物が直接的な原因となったのは20%なのだということです。1%が水が原因で、残りは感染経路が不明(!)とされています。じつは日本でも同じような状況で、有名な生カキが直接的な原因となっている食中毒事件は少なく、感染経路の突き止められない集団感染が多数発生しています。

ちなみに、どうやらG2-4株はほかの型よりも有意に入院率と死亡率が高いようです*1。しかし、NoroVirusによる感染症のほとんどはG2-4によるものであり、大したインパクトはないですね(苦笑)。

Norovirusによる感染症は、インフルと並んで冬場の感染症のキモですが、できるだけかかりたくないものです。

*1:Desai R, Hembree CD, Handel A, et al. Severe outcomes are associated with genogroup 2 genotype 4 norovirus outbreaks: a systematic literature review. Clin Infect Dis 2012;55:189–93.